「無音の巨大三角形」をF-16が追った夜 —— ベルギーを覆った伝説のUFO大量目撃、いまも解けない謎の正体

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 ヨーロッパ屈指の「UFO大国」としてオカルトファンの間で語り継がれる国、それがベルギーだ。

 1989年から1991年にかけて同国全土を覆った謎の発光体ラッシュは、最終的に自国の空軍がF-16戦闘機を緊急発進させる異例の事態にまで発展した。

 レーダーが記録した不可解な加速データの正体は、30年以上が経過したいまも専門家の間で意見が真っ二つに割れている。当時いったい何が空を舞っていたのか、その全貌をたどってみよう。

軍警察も目撃した「無音の三角形」、始まりは143件の通報

 事の発端は1989年11月29日の夜だった。ベルギー東部ウーペン地域だけで143件もの目撃通報が殺到し、現場に駆けつけた軍警察(ジャンダルムリー)の隊員自身も三角形の飛行物体を目撃したという。

 目撃者たちが口をそろえたのは、ほぼ無音のまま低空をゆっくりと移動する巨大な三角形の機影だ。各辺の先端には直径約1mの白色ライトが3つ並び、中央にはオレンジ色の回転灯が確認されたという。

 その後1991年夏までの間に、ベルギーUFO現象研究会(SOBEPS)が集計した報告件数は約2000件、目撃者総数は4000〜5000人にのぼる。近年は1万人超とする説も出回るが、当時の一次資料との整合性は取れておらず注意が必要だ。

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証言による再現画像 Photo: Crobard / Wikimedia Commons(Public Domain)

F-16が2度とらえた”何か”、レーダーは一瞬で時速約1800kmへ跳ね上がった

 目撃の波が頂点に達したのが1990年3月30日から31日にかけての夜だった。ブリュッセル南部一帯で多数の目撃通報が相次ぐと同時に、地上のレーダーも同じ空域に不審な反応を捉えた。

 事態を重く見たベルギー空軍はF-16戦闘機2機を緊急発進させた。両機はレーダー上で対象を2度ロックしたが、目視での確認には至らなかった。この間、レーダーが記録した対象の速度は一瞬にして時速換算で150ノット(時速約280km)から970ノット(時速約1800km)へと跳ね上がっていたという。

 一方、この波を象徴する”物的証拠”とされた1990年4月撮影の「プティ・ルシャン写真」は、2011年に撮影者本人が偽造を認めている。当時10代後半だった作業員が発泡スチロールの模型とライトで作り上げたものだった。写真という視覚的証拠は崩れたが、軍のレーダー記録や多数の目撃証言そのものが消えたわけではない。

ステルス機説、集団心理説、大気現象説——割れたままの専門家の見解

 正体をめぐる仮説は大きく3つある。ひとつは秘密裏に開発された軍用試作機、とりわけステルス機F-117を疑う説だ。だが米国・ベルギー両国の国防当局はこれを否定しており、ホバリングや低速での直角旋回は既知の固定翼機の物理特性とも一致しない。

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F-117 ナイトホーク Staff Sgt. Aaron Allmon II – http://www.defenselink.mil/, パブリック・ドメイン, リンクによる

 もうひとつは、当初のヘリコプターやディスコのレーザー光の誤認がメディア報道で増幅され、「三角形+3つのライト」という共通イメージが目撃者の間に広まったとする集団心理説だ。ただし最初の大量通報があった11月29日時点では大々的な報道はまだされておらず、この説だけでは説明しきれない部分も残る。

 三つ目は大気現象説だ。退役後に独自検証を進めたデ・ブロウワー将軍や、レーダー記録180時間分を精査した研究者マーク・アレは、逆転層による”蜃気楼”効果やフィルター処理のノイズが見かけ上の急加速を生んだ可能性を指摘する。一方、物理学者オーギュスト・ミーセンは、それでも説明のつかない事例が最低2件は残っていると反論している。

 SOBEPSの最終報告書では、既知の現象では説明のつかない事例が500件以上残されたとされる。もっとも「未確認」は異星人由来を意味する言葉ではなく、原因が特定できていない科学的カテゴリーにすぎない。

 プティ・ルシャン写真の偽造や、ディーストでの目撃がレーザー光だったことなど、個別の事例はすでに決着がついているものも多い。だが集団的な誤認がどこまで波全体を説明できるのか、そして1990年3月30〜31日のレーダー波の正体そのものは、今も専門家の合意に至っていない。

 この事件がいまなお参照され続けるのは、当時のベルギー空軍が異例なほど情報を公開し、民間の研究団体と協力しながら「分からないものは分からない」と公言した点にある。政府機関がここまで率直に無知を認めた例は、西欧では今も極めて珍しい。

 大気の悪戯か、それとも未知の技術か。レーダーが刻んだ時速約1800kmという数字の意味を、私たちはまだ誰も解き明かせていない。

参考:Mysterium Incognita、ほか

TOCANA編集部

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