【ヴァルジーニャ事件】30年前に本当は何が運び出されたのか… 元警察署長が死の前に遺した証言とその矛盾

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「ブラジルのロズウェル」と呼ばれるヴァルジーニャ事件が、発生から30年を経て再び揺れている。UFOドキュメンタリーで知られる米国の映画監督ジェームズ・フォックス氏が、亡くなった元警察署長の代理人弁護士による証言を公開したのだ。軍による「生物の回収」を元署長が現場で目撃していたという内容だが、ブラジル国内の研究者からは早くも厳しい異論が上がっている。

銃を手に兵士と対峙した署長と「国家安全保障」の一言

 事件の舞台は1996年1月、ブラジル南東部ミナスジェライス州の地方都市ヴァルジーニャだ。同月20日、ジャルジン・アンデレ地区で3人の若い女性が、赤い目と茶色い皮膚を持つ奇妙な生き物を見たと証言したことから騒動は始まった。以後、軍が生物を回収したという噂が絶えない。

 今回公開されたのは、同市の元警察署長ペドロ・アギアール氏の弁護士、タレス氏が自ら撮影した映像だ。フォックス氏はアレッシ・アラマン氏の番組で、署長の死後に遺族と弁護士へ接触し資料を探していたと明かした。

 弁護士の説明によれば、アギアール氏は20日の朝、消防士とともに現場へ向かったが、区域を封鎖していたブラジル陸軍の兵士に行く手を阻まれた。武装していた署長は押し問答の末、若い兵士に逮捕を告げる事態にまで発展したという。

 騒ぎを収めたのは作戦の指揮官だった。指揮官はこれを連邦の管轄に属する国家安全保障上の案件だとし、署長に現場を離れ、隣町トレス・コラソンイスの陸軍軍曹学校へ出向くよう命じたとされる。

 それでも署長は離れた場所から、兵士たちが網か毛布のようなものを生物にかぶせ、車両で運び出す様子を目撃したと弁護士は説明している。生物からは強いアンモニア臭が漂っていたこと、さらにその後何年にもわたり、私服の政府関係者に家族の生活を監視されている恐怖を抱えていたことも語られた。

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エイリアンの想像図。画像は「YouTube」より引用

その「新証言」は本当に新しいのか

 だが、ブラジルの研究者は冷ややかだ。YouTubeチャンネル「Operação Fogo no Céu」を主宰するジョアン・ルーカス・ダ・シウバ氏は、この証言が目新しいものではないと指摘している。

 同チャンネルは2026年4月の配信で、UFO研究家のウビラジャラ・ロドリゲス氏が2001年に出版した書籍『O Caso Varginha』を検証した。同書には1996年当時の現地紙が匿名の「司法関係者」として報じた人物の発言が収められており、それこそがアギアール氏だったと特定したのだ。

 問題は、その証言が年月とともに変化している点だ。1996年の報道では、2体の生物がビニールシートで覆われ地域病院に運ばれたとされていた。しかし後の聞き取りでは、どの病院だったか定かでないと本人が答えている。そもそも当時のアギアール氏は、自分では見ていないと認めた上で、事件の実在を確信していると語っていた。

 さらに元署長は、地区の住民女性たちがパニックになって警察と消防に通報したと主張していた。だが、目撃者姉妹の母親ルイーザさんはロドリゲス氏の取材に対し、通報など一切していないと否定している。

伝聞が「目撃」に変わったのか、恐怖が口を閉ざさせたのか

 人づてに聞いた話が、30年の間に自らの目で見た光景へと変わった。懐疑派はこれを記憶の再構成の典型例とみる。報道や研究者の仮説が、いつしか本人の体験として取り込まれたという見方だ。警察に正式な記録が残っていないことも、疑問に拍車をかけている。

 一方で、事件の実在を信じる人々は別の解釈を示す。当時の軍による威圧的な空気を考えれば、初期の証言で口をつぐんだ部分があっても不思議ではないというのだ。SNS上でも、元警察署長という立場の人物の証言は重いとする声と、地元で流れていた噂の焼き直しにすぎないとする声に二分されている。

 物証がない以上、証言の変遷を見れば慎重になるのが当然だろう。ただ、その後何年も監視の影におびえていたという元署長の姿が事実なら、その沈黙の裏にこそ語られなかった何かがあったのではないか。30年前のヴァルジーニャで本当は何が運び出されたのだろうか。

参考:Vigilia、ほか

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