“古代マヤの神秘”クリスタル・スカルの真実とは… 大英博物館が下した容赦ない結論

“古代マヤの神秘”クリスタル・スカルの真実とは… 大英博物館が下した容赦ない結論の画像1
大英博物館のクリスタル・スカル By Rafał Chałgasiewicz (Own work), CC BY 3.0, Link

 透き通る水晶で精巧に彫られた、人間そっくりの頭蓋骨。古代マヤアステカの神官が儀式に使い、触れた者に超常的な力を授けるという「クリスタル・スカル」の話を聞いたことはないだろうか。世界に13個が散らばっていて、すべて揃うと人類に大いなる叡智がもたらされる——そんな壮大な伝説まで語られてきた。

 だが、大英博物館やスミソニアン協会が本気で調べた結果は、ロマンとはほど遠いものだった。舞台は古代のジャングルではなく、19世紀ヨーロッパの骨董品市場。しかも主犯格らしき人物の名前まで、ほぼ特定されている。

骨董商ユージン・ボバン、すべての始まり

 現存する代表的なクリスタル・スカルは、大英博物館が所蔵する1体、パリのケ・ブランリ美術館が所蔵する1体、そしてスミソニアン協会が所蔵する1体などが知られている。

 大英博物館のスカルは1881年、パリの骨董商ユージン・ボバンの店に姿を現し、1897年にティファニー経由で博物館の手に渡った。ケ・ブランリ美術館のスカルも、同じくボバンの手を経て収集家アルフォンス・ピナールが購入し、のちに寄贈したものだ。

 つまり、有名なクリスタル・スカルの少なくとも2体は、同一人物の店から出てきている。「古代文明の遺物が、たまたま同じ骨董商のもとに集まった」と考えるより、「一人の商人が“古代の遺物”をせっせと売りさばいていた」と考えるほうが、よほど筋が通るのではないだろうか。

 スミソニアン協会が所蔵する1体に至っては、1992年にどこの誰とも知れない人物から博物館へ匿名で送りつけられたという、輪をかけて胡散臭い来歴を持っている。

“古代マヤの神秘”クリスタル・スカルの真実とは… 大英博物館が下した容赦ない結論の画像2
ユージン・ボバン Public Domain, Link

“発掘した娘”の物語は購入をごまかす創作だった?

 クリスタル・スカルの中でもっとも名を知られているのが、探検家F・A・ミッチェル・ヘッジスが所有していた「ミッチェル・ヘッジス・スカル」だ。

 語られてきた発見譚はこうだ。1924年、ベリーズの古代マヤ遺跡ルバアントゥンを発掘中、17歳の誕生日を迎えた娘アナが崩れた祭壇の下からスカルを発見した——実に絵になる話である。

 ところがオークション記録をたどると、まったく別の姿が浮かび上がる。1943年10月15日、ロンドンのサザビーズで骨董商シドニー・バーニーから、ミッチェル・ヘッジス自身がこのスカルを購入したという記録がしっかり残っているのだ。同年12月に兄へ宛てた手紙でも、本人がこの購入を認めている。

 一方の「娘が発掘した」という話は、当時の発掘記録にも、同時代の写真にも、第三者の証言にも一切出てこない。ミッチェル・ヘッジス自身の著作でさえ、発見地や発見者を明記していないというから、後から誰かが物語に色をつけた可能性は高いと言わざるを得ない。

大英博物館・スミソニアンが突きつけた「工具痕」

 とはいえ「本当に古代の遺物かもしれない」と思う人のために、話は科学の領域に移る。

 大英博物館は1967年、1996年、2004年と繰り返しスカルを分析し、スミソニアン協会も1992年と2007〜2008年に、フランスの国立美術館修復研究センター(C2RMF)も2007〜2009年に、それぞれ独自の調査を行った。

 結果は判で押したように一致している。表面には、近代の宝飾加工用電動工具でなければ付かない回転研磨の痕跡がくっきりと残っていた。電子顕微鏡で観察すると、天然には存在しないダイヤモンド研磨材や、1890年代以降にようやく合成技術が確立した炭化ケイ素(シリコンカーバイド)の痕跡まで検出されたという。

 さらに、使われている水晶そのものがマダガスカル産またはブラジル産と判明している。中南米で当時そうした産地の水晶を加工していた記録は見当たらない。

 これらの証拠から大英博物館が導き出した結論が、「19世紀後半、ドイツの水晶加工の町イダー・オーバーシュタインの工房で作られた可能性が高い」というものだ。ミッチェル・ヘッジス・スカルについても、スミソニアンの調査で20世紀の高速ダイヤモンド工具による加工痕が確認され、20世紀ヨーロッパ製の疑いが強いとされている。

 そして何より、正式な考古学的発掘調査でクリスタル・スカルが出土した例は、これまで一件も存在しない。

“古代マヤの神秘”クリスタル・スカルの真実とは… 大英博物館が下した容赦ない結論の画像3
パリ、ケ・ブランリ美術館のクリスタル・スカル By Klaus-Dieter KellerSelf-photographed, Public Domain, Link

“世界に13個”伝説は、20世紀後半に生まれた

「世界に13個の水晶ドクロが散らばっており、すべて揃うと人類に叡智がもたらされる」という、あの壮大な伝説はどこから来たのか。

 古代マヤの一次資料には、そのような話は見当たらない。この伝説を広めた中心人物とされるのが、1945年に「国際クリスタル・スカル協会」を設立し、水晶ドクロの超能力を研究していたニューエイジ研究者、F・R・「ニック」・ノセリーノだ。1980〜90年代にかけて彼らの研究・出版活動を通じて、伝説は徐々に形作られていったとされる。

 2012年のマヤ暦終焉と結びつける説も、2008年ごろのテレビ番組をきっかけに広まったもので、こちらもマヤの伝承そのものではない。治癒力や、遠く離れた敵を呪い殺す力、アトランティスや火星との関連といった主張に至っては、検証も裏付けも一切ない。

 古代マヤの神官が儀式で使っていた——そう聞けば、誰だって少しくらいロマンを感じてしまうものだ。だが実態は、産業革命後のヨーロッパで電動工具を握った職人と、それを“古代の秘宝”として売り込んだ骨董商が生み出した、なかなかによくできた商品だったらしい。

 中世の魔術師の仕業にしては、いささか仕事がハイテクすぎたということなのだろう。

参考:WikipediaHistoric MysteriesTORCH(オックスフォード大学)、ほか

TOCANA編集部

TOCANA(トカナ)は、「ホントカナ?」を編集方針に、UFO・UAP、UMA、心霊、予言、超古代文明、都市伝説など世界の「謎」を追うオカルトニュースメディア。2013年の開設から13年、公開記事は2万本以上。
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

“古代マヤの神秘”クリスタル・スカルの真実とは… 大英博物館が下した容赦ない結論のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

トカナ秘密結社購買部