>  > 広島の元アナウンサー「窃盗」事件に冤罪疑惑

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片岡健

 テレビでよく見かけたアナウンサーが刑事事件の容疑者としてニュース番組に登場し、視聴者を驚かせることがたまにある。2012年10月に窃盗の容疑で逮捕された広島の放送局「中国放送」の元アナウンサー、煙石博さん(69)もその1人だ。当時はアナウンサーがまた1人犯罪者に転落したように思われたが、実は今、地元広島でこの事件の冤罪を疑う声が渦巻いているのだ。


■1、2審共に有罪だが……

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2審の判決公判後に会見する煙石さんと久保豊年弁護士、北村明彦弁護士(左から)。

 「私は、証拠もない、疑わしくもないのに、懲役1年、執行猶予3年というとんでもない、信じられない不当判決を受けました」

 去る10月11日、広島本通商店街。街頭に立った煙石さんはマイクでそう訴えた。周囲では、友人、知人らが結成した「煙石博さんの無罪を勝ち取る会」のメンバーたちが道行く人たちに冤罪を訴えるチラシを配ったり、最高裁に「公正な裁判」を求める署名を呼びかけた。この日用意した1000枚のチラシは1時間でほとんどなくなったという。

 2007年に定年退職するまで柔和なキャラクターで広島の人々に親しまれた煙石さんはこの日からちょうど3年前、広島南署に窃盗の容疑で逮捕された。容疑内容は広島銀行大河(おおこう)支店の店内で他の客が置き忘れた現金6万6600円を盗んだ疑い。煙石さんは一貫して無実を訴えているが、すでに1、2審共に有罪とされ、残す望みは最高裁のみという苦しい状況だ。

 ただ、実はこの事件、地元の記者や裁判傍聴マニアの中には「冤罪」だと見ている人が少なくない。前出「勝ち取る会」が「公正な裁判」を求めて集めた署名もすでに4701筆を最高裁に提出済みという。

 冤罪が疑われる事情は一体何なのか。


■そもそも「事件」は存在したのか?

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事件の舞台となった広島銀行大河支店

 まずは事件の内容を簡単に紹介しておこう。

 この事件の被害者A子は、母親が営む不動産会社で経理を担当する女性である。A子は事件の日、会社の固定資産税や従業員3人分の市県民税を支払うため、現場の銀行に来店。だが、固定資産税の支払いを済ませると、市県民税の支払いを忘れ、そのために持参した「現金6万6600円が入っていた封筒」を記帳台に置き忘れて退店したという。

 その後まもなく男性警備員が記帳台にA子が置き忘れた封筒を見つけ、窓口の女性行員に手渡した。しかしこの時、封筒には市県民税の払込用紙が入っていただけで、現金6万6600円は入っていなかった――。

 これが事件発覚の経緯だ。その後、銀行から連絡をうけて再来店したA子が「銀行に置き忘れたお金を盗まれた」と警察に被害を訴える。そこで警察が店内の防犯カメラの映像を調べたところ、A子が封筒を置き忘れた後、記帳台に近づいた人物が1人いた。それが煙石さんだった。

 こうして煙石さんは容疑者にされたのだが、すでにこの事件の根本的な問題に気づいた人もいるだろう。そう、A子が置き忘れた封筒には、そもそも本当に現金が入っていたのか――という問題だ

 何しろ、これが本当に窃盗事件なら、犯人はわざわざ封筒から現金のみを抜き取り、自分の指紋がついたかもしれない封筒を記帳台に戻したことになる。こういう時は普通、封筒ごと盗むのではないか……。

 ちなみに封筒から煙石さんの指紋は検出されていない。

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