山形県の集落で幼少期に性的いじめ 3人殺傷事件の裏にある、黒い記憶と刃物
分析心理学の父、カール・グスタフ・ユングは、「シンクロニシティ」という概念を唱えた。一見、関連がないように見える事象が相互につながり合っていることを説いたのだ。かつてメディアを賑わせた凄惨な事件や悲劇的な事故。その現場に残された〝遺物〟をたどると、忌まわしい記憶と、我々が過ごす平凡な日常をシンクロさせる見えない糸が浮かび上がってくる。事件記者が綴る暗黒のアナザーストーリー「悲劇の現象学」シリーズ
【第4の遺物 山形3人殺傷事件とブラックニンジャソード】
山形県南西部に位置する飯豊町(いいでまち)。人口1万人に満たない町にある40戸あまりの小さな集落で事件は起きた。
2006年5月7日未明、ゴールデンウイーク最終日の夜のしじまを怒号と悲鳴が破った。
カメラ店を営む男性(60、以下当時)の家に男が押し入り、その妻(54)と長男(27)に刃物で襲いかかった。
「男性と長男はそれぞれ腹や胸などを十数回刺されて死亡。妻も脳挫傷などの重傷を負った」(当時の捜査関係者)
その後の捜査で、犯人は被害者の隣家に住む24歳の会社員の男と判明。凶行に至った背景が明らかになると、田舎の狭いコミュニティーで起きた事件への注目が一気が高まった。
「取り調べで、男の狙いが、3歳年上の長男にあったことが明らかになりました。男は、この長男から小学4年ごろから卒業のまでの間に繰り返し性的いじめを受けていた。電話で呼び出されて下半身を露出させられたり、自慰行為を強要されるようなこともあったようです。男は、事件の裁判で『中学生のころにその意味を知って悔しさがこみ上げてきた』と証言し、いじめ体験に思い悩んで自傷行為に走ったとも話している。事件は、その復讐を果たすためだったというのです」(事件を取材した新聞記者)
男は地元の工業高校を卒業した後に上京。東京のコンピューター関係の専門学校に進んだ。
「アニメ好きでおとなしい性格だった」(中学時代の同級生)という男。数年間の東京生活を経て地元に戻り、事件当時は、山形県内の電機会社で派遣職員として働いていた。対してターゲットとされた長男は山形市内の中古車部品リサイクル会社に勤め、実家で趣味の車いじりをする姿が度々目撃されていた。
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