山形県の集落で幼少期に性的いじめ 3人殺傷事件の裏にある、黒い記憶と刃物

「2人は対照的な人生を歩んでいた。被害に遭った長男は小さい時からガキ大将タイプで、加害者の男は内向的ないじめられっ子タイプ。幼少期のトラウマを克服できずに鬱々とした日々を過ごした男に対し、長男のほうは結婚相手も見つけて順風満帆。10月にはハワイで挙式を挙げる予定だった」(先の記者)

 現場周辺は農村地帯で、同じ姓の一族で占められていた。男の家は一族の総本家に当たり、被害者の家はその分家。でも、実際の2人は田舎の因習とは真逆の“主従関係”にあったわけだ。


■男が愛で続けた、特殊な凶器

 こうした複雑な人間模様とともに、男が携えた凶器にも世間の耳目が集まった。

「犯行に使われたのは、『ブラックニンジャソード』と呼ばれる武器だった。全長70センチ、刃の部分が45センチある特殊な刃物。その名の通り、全体が黒く塗装されている」(先の捜査関係者)

 男は、本来は観賞用の模造刀として販売されていたこの刃物を、東京に住んでいた20歳の時に新宿のナイフ専門店で購入。犯行のチャンスをうかがう4年の間に、刃を研ぎ続けていたという。

「もともと黒かった刃の部分は研ぎ石で削られていく間にステンレスのような銀色に変化し、犯行時には日本刀のような形態になっていた。自宅には、腕に装着して投げつけるタイプのマニア向けの娯楽用ナイフ2本も所持していた。長男に、かなり強い殺意を抱いていたことになる」(同)

 米国でのニンジャブームがきっかけで作られたことから、その名前が取られた「ブラックニンジャソード」。米国のヒーロー物の人気アニメ「GIジョー」のキャラクターが使うことでも知られていた。

「それまでは『サムライソード』などとも呼ばれ、インターネット通販などで購入できていた。ところが、事件後、その危険性が問題視され銃刀法違反の取り締まり対象になった」(同)

 なぜ男がその凶器を復讐の道行きに選んだのかは今もってわからない。

 幼き日の悪夢に囚われた彼の目には、ヒーローたちが悪者退治に使った「おもちゃの剣」が、忌まわしい過去を祓う「破邪の剣」に映っていたのかもしれない。
(文=KYAN岬)

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悲劇の現象学 Vol.1「木嶋佳苗とクックパッド」
悲劇の現象学 Vol.2「【秋葉原事件】加藤智大と同人アニメ」
悲劇の現象学 Vol.3 「【尼崎事件】角田美代子と“粉もの”」
悲劇の現象学 Vol.4「福知山線脱線事故と沖縄」

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