「最後の晩餐」に残された、殺人鬼たちの異常すぎる食欲と執念

アメリカの死刑制度において、最も象徴的で、かつ議論を呼ぶ儀式の一つが「最後の晩餐」だ。刑執行の数時間前、受刑者は自分の望む食事をリクエストすることができる。
かつての凶悪犯たちが、自らの人生の終止符として選んだメニュー。そこには、度を越した大食漢から、哲学的な一粒まで、あまりにも生々しく奇妙な「人間の本性」が映し出されている。
今回は、アメリカの刑務所史に残る「最もぶっ飛んだ最後の晩餐」の数々を紹介しよう。
1. 驚愕の2万9000キロカロリー! 「肉屋」と呼ばれた男の飽くなき食欲

ゲイリー・カール・シモンズ・ジュニア。その凄まじい犯行から「ザ・ブッチャー(肉屋)」と恐れられた彼は、死の直前、小規模な軍隊を養えるほどの巨大な宴をリクエストした。
ピザハットの超大型ディープディッシュ・ピザ2枚(トッピング山盛り)に加え、大量のパルメザンチーズ、ランチドレッシング、特大サイズのドリトス、マクドナルドのLサイズポテト。さらにデザートとしてストロベリーアイスクリーム2パイント(約1リットル)とシェイク2杯、コーラ20オンス……。
その総エネルギー量は約2万9000キロカロリー。成人男性が必要とする1日の摂取量の11倍以上だ。記録によれば、彼は執行の90分前まで、まさに「フード・ファイター」さながらにこの山のような食事を胃に流し込んでいたという。死を目前にして、これほどまでの「生への執着(あるいは食欲への逃避)」を見せられると言葉を失う。
2. 「肉団子が入ってない!」死の直前にクレームをつけた男

1995年に処刑されたトーマス・グラッソは、晩餐の内容自体も豪華だったが、それ以上にその「執念」が語り草となっている。
彼はムール貝24個、ハマグリ24個、バーガーキングのダブルチーズバーガー、バーベキューリブ、パンプキンパイなど、計48品ものシーフードとジャンクフードを平らげた。だが、彼が最期の瞬間に残した言葉は、後悔でも謝罪でもなく、厨房への不満だった。
「俺が頼んだのはミートボール入りのスパゲティ缶(SpaghettiOs)だ。なのに普通のスパゲティが出てきた。この不祥事を、ぜひマスコミに伝えてほしい」
死を目前にした人間が、パスタの種類の違いを一生の恨みとして語る。人間の自尊心がいかに些細なところに宿るのかを物語る、ブラックジョークのような実話である。
3. 慈善のピザと「一粒のオリーブ」

一方で、心を打つ(?)リクエストもある。2007年に処刑されたフィリップ・ワークマンは、「ベジタリアン・ピザを地元のホームレスたちに寄付してほしい」と頼んだ。刑務所側は「慈善活動は認められない」と拒否したが、このニュースを知った市民たちが全米からシェルターへピザを贈り、ナッシュビルの街がピザで溢れかえるという奇跡のような現象が起きた。
対照的なのが、1963年に絞首刑に処されたビクター・フェガーだ。彼が求めたのは、「種が入ったままの一粒のオリーブ」のみ。彼は、自分の死後、体の中から平和の象徴であるオリーブの木が生えてくることを願ったと言われている。

日本でも「武士の嗜み」として切腹の前に食事をとる文化があったが、この「一粒」という潔さには、洋の東西を問わない美学さえ感じてしまう。
4. シリアル、KFC、そして「腹が減っていない」という嫌がらせ
他にも、シリアル(フロスティ)一杯で「自分は死ぬに値する」と悟った男や、KFCのバケツと1ポンドのイチゴを爆食いした「殺人ピエロ」ジョン・ウェイン・ゲイシーなどがいる。

なかでも最悪の嫌がらせを仕掛けたのが、人種差別的な殺人で死刑となったローレンス・ラッセル・ブリュワーだ。彼はステーキ、オムレツ、ピザ、ファヒータ、ルートビアなど、目も眩むようなフルコースを注文。ところが、いざ豪華な食事が独房に運ばれてくると、ニヤリと笑ってこう告げた。
「腹が減ってないから食べないよ」
この身勝手な行動にテキサス州当局は激怒。以来、同州では死刑囚が特別にメニューを選ぶ権利が剥奪されることとなった。
皿の上に残された「人間という謎」
死刑囚の最後の晩餐。それは、国家によって命を奪われる直前の人間に許された、最後の「自由」の行使だ。
単なる悪趣味なニュースに思えるかもしれない。だが、皿の上に並べられた欲望や後悔、あるいは冷酷な皮肉。それらを眺めていると、どんな犯罪心理学の論文よりも、彼らが歩んできた人生の歪みが伝わってくる。
もし、あなたが明日、この世を去るとしたら……。最後に求めるのは、山のようなジャンクフードだろうか、それとも、たった一粒の静かな記憶だろうか。少なくとも「肉団子がない」と叫びながら旅立つような、未練たらしい最期だけは避けたいと切に願うばかりである。
参考:Daily Star、ほか
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