死にそうになった時に現れる「第3の男」?多くの者が“見た”と証言

■死を覚悟した次の瞬間、母なる愛に包まれる

 1979年の1月、ある厳しい寒さの日、女性医師のイボンヌ・ケイソンはセスナ機の小さなキャビンの中で、麻疹脳炎の患者の容態を見守っていた。

 カナダのトロント近郊を飛ぶ小型機は一路、数百マイル先の病院へと向けて飛行を続けていた。やや強まった風による振動を乗客たちが感じはじめた次の瞬間、強烈な吹雪にあおられて機体が大きく揺れ動いた。そのときの衝撃によるものか、不運にも機体の2機のエンジンのうちの1機が停止してしまったのである。パイロットがどんなに手を尽くしてもその後機体は上昇することなく、下降を続けるばかりだった。

 パイロットである機長は恐怖に襲われたが、もはや被害を最小限にとどめながら不時着するしかないという現実に向き合わざるを得なかった。

「その時、激しい恐怖に襲われてパニックに陥ったわ。私は今、死に直面しているのだという考えで頭がいっぱいになったの」と、この事故から30年以上が過ぎた今、ケイソン医師は語る。

 しかしその後、ケイソン医師は何か静かなものが彼女の恐怖を払い落としていくのを感じ、その後「落ち着きなさい」という声が聞こえたのだという。

「これはきっと神の声だわ」と彼女はすぐに思ったという。そしてこの声のおかげで、機体が下降を続ける最中にあっても冷静な気分のままでいることができたのである。「死を恐れる理由はなにもないのだと思ったの」とケイソン医師は語る。

 機長の必死の操縦で機体はなんとか、オンタリオ湖の氷に覆われたエリアに不時着した。

 しかし氷は薄く不時着のショックであっさりと砕け、機体と共に簡易ベッドに括りつけられた患者もまた不運にも沈みはじめていた。当時26歳のケイソン医師は必死に患者を救おうと力を尽くしたがどうすることもできなかった。そのうえ、機長と看護士も湖の中へと投げ出されてしまったようで姿は見えなかったそうだ。

 機体を離れたケイソン医師は必死になって凍える吹雪の中を泳ぎ、より厚い氷の部分へと進路を向けたその時、再び声が聞こえたのだった。

「岸を目指しなさい」

 声は何度かそう繰り返したという。一度は氷に向かって進みはじめた彼女であったが、この声に従い方向転換して岸に向かって泳ぐことにしたのだった。

「服も靴もずぶ濡れになって鉛のように重たくて、泳いで岸まで辿り着ける気がしなかったわ」と彼女はその時の絶体絶命の状況を回想する。

「そして私の身体は沈みはじめたの…。水の中でもう何も見えなくなって、肺にまで水が流れ込んできた時…」と、彼女はありありとその時の状況を思い出した。

「その時急に、身体が浮上していったの。そして次に目を開いた時、私は湖の水面で泳いでいたのよ」

 そして彼女は自分の周囲に光が取りまいていることに気づいたという。

「私はまだ生きていて、こうして光に囲まれている…。今、私は愛に包まれているのだと理解したわ。この感触はまさに私が生まれたばかり赤ちゃんの時に受けていた母の愛なのだということを…」

 彼女が厳寒の湖を泳ぎ続けていた間、彼女の意識は周囲を取り巻く幻想的な光と、現実の景色との間を行ったり来たりしていたという。

「それはちょうど2画面テレビのようなもので、メインの映像は周囲の光を映し出していて、片隅の小さなサブの画面は岸に向けて泳いでいる私自身を映していたのよ」 

 しかし彼女の体力はもう限界であった。水をかく動きが止まり、再び彼女の身体が沈みはじめたという。彼女がここで死んだとしてもまったく不思議ではなかった。…だがその時、水の流れが彼女の身体を湖面に浮かぶ松の木の丸太に向かわせたという。そして丸太にしがみついた彼女は九死に一生を得て、岸に辿り着いたのだった。

 驚いたことに、岸には機長と看護士の姿もあった。そして彼女らは駆けつけた救命ヘリに救助されたという。

 果たして、ケイソン医師を導いた声は「神の声」なのか? もちろん、現在の我々には残念ながらまだ謎のままである。しかしながら絶体絶命の状況下に“登場”し危機を救ってくれる「第3の男」に、このように実に多くの人々が実際に“出会って”いるのだ。

 特定の宗教に帰依することがなくとも、これらの「第3の男」の存在を信じ、その声に真摯に耳を傾けるべきであるということを少し頭の片隅に入れておくだけでも、ずいぶんと我々の人生は楽になるのではないだろうか。このパトリシア・ピアソン氏の記事を通して、筆者もまた改めて人間の死や死後の世界、あるいは超感覚的コミュニケーションついて考え直す機会を与えられた次第である。
(文=仲田しんじ)

参考・「DailyMail」ほか

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場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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