泥炭地から掘り起こされた2,400年前のミイラ「トーロンマン」の顔がリアルすぎる!

 ヨーロッパの泥炭地では「ボグ・ボディ」と呼ばれる屍蝋(しろう)化した遺体がしばしば発見されることがある。

 その数は数百体とも言われ、中には1万年前のものもある。主に北西ヨーロッパのイギリス、アイルランド、オランダ、ドイツ北部やデンマークに多く、最近では2011年に見つかったアイルランドの「カシェルマン」が記憶に新しい。

 彼らボグ・ボディの驚異的なところは、その抜群の保存状態だ。

 完全に皮膚に覆われ、内蔵は全く損傷がない。これらは全てピート(泥炭)のおかげといえる。ピートは死んだ苔の堆積で、その保水性の高さがボグ・ボディにとって理想的な保存環境を育んでいたと考えられる。

 もちろん、彼らがどうして泥炭地に横たわっていたかは知る由もないが、首を縄で絞められた痕から犯罪者として処刑された、もしくは生贄だったのではと諸説囁かれている。

■1950年に発見された「トーロンマン」とは

 そんなミステリアスな彼らの中で最も保存状態が良く、また世界的にも有名なのが「トーロンマン」ではないだろうか。

 1950年、彼はデンマーク・ユトランド半島の泥炭地の中から発見された。ある兄弟が燃料に使うピートを切り出していたところ、泥炭層に遺体が埋まっているのを見つけたのだ。遺体の首に縄が掛かかっていたことから殺人事件の被害者と思い、シルケボーの警察に連絡、ところがこれは20世紀の殺人では無かったのだった。

泥炭地から掘り起こされた2,400年前のミイラ「トーロンマン」の顔がリアルすぎる!の画像1トーロンマン(Tollund Man) 画像は「YouTube」より

 放射性炭素年代測定の結果、この遺体は約2,400年前のものと判明。また、検死報告でトーロンマンの死因は吊るし首とされ、2002年のX線撮影でも1950年当時の調査を裏付ける吊るし首特有の舌の膨張が確認されている。

 泥炭地中の高酸性水、低温、酸欠のおかげで見つかったミイラに傷みは無く、歯や爪から推定40歳、身長は161㎝と当時としては小柄だったことも明らかになった。

 胃の内容物からは最後の食事がオートミールのようなものだったと判明した。食材は野生、栽培を問わず多品目にわたり、しかも日常食べるには豪華過ぎるため特別な食事の可能性が高く、死の直前、丸一日食事を取らなかった痕跡も認められた。

 また、彼が泥炭地に胎児のような姿勢で埋まっていたことや眼も口も閉じられていたことなどから判断して、人類学者は人々がピートの切り出しを神に乞うため、トーロンマンを人身御供として捧げたのではと推論している。


■デンマーク「シルケボー博物館」で展示

 トーロンマンは現在、デンマーク・シルケボー博物館の特別展示室に安置されている。残念ながらオリジナルは頭部を残すのみだ。

 1950年代の有機物の保存方法は十分に発達していなかったため頭部と片足だけ保存して残りはさらなる研究へ回したという経緯がある。

 その後1987年、博物館は白骨化した遺体を基に胴体部分を復元し、オリジナルの頭部にレプリカの身体を接続して展示することとなった。

 トーロンマンにかける研究者たちの情熱は今世紀に入っても衰えることはなく、2002年には15年ぶりに科学者チームが再調査を開始している。永遠の眠りから何度も叩き起こされるトーロンマン、出来ることならそっとしておいてあげたいものだ。
(文=佐藤Kay)

参考:「Amusing Planet」、「Ancient Origins」、「Mummy Tombs」ほか

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