古代人は“ブルー”が見えなかった? ~青色の認識でわかる、色と言語の不思議~
■文化や民族によって色の見え方が違う!?
そして現在の世界にあっても、ブルーの概念を持っていない文化があるという。それはアフリカ・ナミビアの北部に暮らす少数民族・ヒンバ族で、彼らの文化ではブルーを表す言葉が無いのだ。研究者によって数年前に行なわれたテストでは、11個の緑色の四角形と1個のブルーの四角形を円形に並べた図をヒンバ族の人々に見せたのだが、ひとつだけ周囲から浮いて見えるブルーの四角形を人々は他と区別できなかったり、他と違う色だと判断するのにとても時間がかかったりしたということだ。この実験によって、ヒンバ族の人々は、ブルーと緑を見分けるのが困難であるという結論にいたったのだ。
これとはまた別に、米マサチューセッツ工科大学の研究チームは、ロシア語ではライトブルー(ロシア語で「goluboy」)とダークブルー(ロシア語で「siniy」)がまったく異なる単語で呼ばれていることに着目し、ロシア語のネイティブスピーカーを交えた実験を行なった。それによれば、ロシア語のネイティブスピーカーは一般のアメリカ人よりもライトブルーとダークブルーを10%早く識別することができたという。果たして、これらの研究結果は民族や文化によって色の見え方が違ってくるということを示唆しているのだろうか。
■エスキモーの言葉では“雪色”が50種類も
ここまで“ブルー”という言葉をあえて「青」としてこなかったのには実は理由がある。それというのも、我々の日本文化でもブルーは緑色などとかなり重複した使われ方をしているからだ。例えば、信号機の青信号はたいてい緑色や青緑色であり(中には本当に青色光の信号機もあるが)、本来であれば緑信号が正しいようにも思える。英語でも信号機の「進行可」を表す色は「green light」である。また「青りんご」も実際には名実共に「グリーンアップル」であり、八百屋の別名である青果店の“青果”や“青物”も近代的な色見本からすればやや奇妙な感もある。というよりも“ブルー”を“青”と翻訳してしまったこと自体がそもそもの間違いなのかもしれない。
これはもちろん日本人がブルーとグリーンを見分けられないのではなくて、文化的に青と緑が同じような意味で使われることが多いということである。ということは、ヒンバ族の人々も決してブルーとグリーンを色として識別できないのではなく、異なる色として分類することが文化的に難しいということなのかもしれない。
英語と中国語の色を表す語彙とその色をマップ化し、ネット上に公開している台湾のミュウエ・リー氏は、英語圏の文化では青、緑、ピンクを基本色とし、中国語の文化では赤、青、緑が基本の色になっていることを指摘している。文化とそれを背景にした言語が、人々の色の使い方や好みに影響しているというのである。また、その文化が重要視している対象は、色合いが細かく分類され語彙も多いということだ。一説によれば、雪に囲まれて暮らすエスキモーの言葉では、50種類もの“雪色”があるという。
言語と色――。なかなか興味深いトピックだが、考えに熱中しているうちに重要なアポの時間を逃して“青ざめる”ことのないよう、くれぐれも留意したいものであるが……。
(文=仲田しんじ)
参考:「Daily Mail」、「Business Insider」、「Green Honey」ほか
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