生涯絶対に忘れることがない!! 太陽と月と地球が織りなす神秘現象皆既日食
太陽のエネルギーを遮るものがなくなり、”日常”がおとずれたのだ。あたりはぐんぐんと明るくなる。太陽が月に覆い隠され、一度その輝きを失ったからこそ、その計りしれないエネルギーの輝きを実感することができたのだった。
■月の針の先端をめざせ!
日食の説明用に地球-月-太陽が一直線にならんだ図解が、天文の本や科学雑誌にしばしば掲載されている。ただ、残念ながらそのほとんどが誤解を生むような描き方だ。
そこで月と地球との大きさ、距離の関係をより正確につかめるように描いたのが下記に掲載する図表だ。そのままの比率で縮小するとこのようになる。ほとんどの人が想像するのとは違い、月は意外と遠くにあり、しかも小さい。ちなみに太陽はこの図にはないが、仮に地球の大きさを1cmとすると、太陽ははるか遠い115m離れたところにあり、その直径は107cmになる。(宇宙は広大だ)
そして、皆既日食を見るには、太陽と月の影の間に入らなければならない。しかし、その影はまるで針のように細長い。先端の太さは、わずか直径150kmほど(直径13,000kmの地球にとっては小さな影だ)。これは、関東平野が入るくらいの大きさしかない。この影が時速2250kmとジェット機の3倍くらいの猛スピードで地上を通過していく。その間に入らないと皆既日食を見ることができない。また月は1カ月弱で地球を1周するが、皆既日食は毎月見られるわけではない。月の公転軌道面が、地球の公転軌道面に対して傾いているためだ。
これらを参考にしていただければ、月の影が地球に差すことが、いかに珍しい現象なのかわかっていただけるだろう。これはもう神業と言っていいくらいだ。
次回の皆既日食は2016年3月9日にインドネシアで見ることができる。わりと行きやすい場所なのでぜひ見に行ってみよう。
参考になる本やサイト
●『天体観測の教科書 星食・月食・日食観測編』 著:相馬充 広瀬敏夫ほか/誠文堂新光社
日食の観測や写真撮影の方法など、かなり具体的かつ詳しく解説されている。
●『最新画像で見る太陽』 著:柴田一成ほか/ナノオプトニクス・エナジー出版局
太陽について詳しい!これを読んで皆既日食を見ると楽しさ倍増!
●『天文年鑑2015年版』 著:天文年鑑編集委員会/誠文堂新光社
皆既日食が見られる地域や正確な時刻が出る。2016年の皆既日食を観察する場合は、2015年の11月ごろ出版される2016年版を購入しよう。
●ベン・クーパー氏が飛行機から見る皆既日食ツアーに参加したときの写真が紹介されている。北大西洋上空にツアー飛行機が群がっている様子。<http://launchphotography.com/Total_Solar_Eclipse_2015.html>
(文=山本睦徳)
■山本睦徳(やまもと・むつのり)
ドキュメンタリー作家。地球科学のドキュメンタリー映画製作、記事を執筆。面白くて楽しく読める文章で読者を地球科学の世界へ誘う。<http://www.earthscience.jp>
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