死にそうになった時現れる“第三の男”の正体が明らかに? 科学者が見解発表=スイス
世界各地でいつの時代にも人々の話題にのぼる“幽霊”の存在――。姿かたちは見えないものの、文化やお国柄を越えて幽霊ほど人類に共通してその存在が認められている超常現象はないかもしれない。現代の科学では把握できないミステリアスな存在として考えられがちな幽霊だが先頃、スイスの研究チームが実験室で人工的に“幽霊現象”作り出すことに成功したという。そして世のあらゆる幽霊現象は、すべて人間の脳の中で起っている出来事だと主張しているのだ。
■“幽霊”は脳内の事実誤認!?
8,000メートル級の14の山の無酸素登頂を世界で初めて達成した著名な登山家のラインホルト・メスナー氏は、1970年6月29日にヒマラヤ山脈のナンガ・パルバット(8,125m)から同じく登山家の弟とともに下山していた途中、自身と弟のほかにもう1人登山家が現れ、暫くの間行動を共にしていたことを後に書き記している。
これはいわゆる“第3の男”と呼ばれる現象で、実は多くの登山家や冒険家、兵士や災害からの生還者などによって語られている存在である。それぞれが体験した危機的な状況下でこの“第3の男”が現れるというのだ。
しかし今回、この“第3の男”を含めた“幽霊”の存在を感じることは、脳の中で起った事実誤認であるときっぱりと言い切る科学者が現れた。その証拠に実験で“幽霊”現象を再現したのだ。
■ロボットアームを使った風変わりな実験
“幽霊”あるいは自分の“分身”を日常的に自覚している人々がいる――。それは脳神経に障害を持つ者や、精神障害者などの一部だ。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の神経科学者オラフ・ブランケ氏が率いる研究チームは、神経障害を抱え“幽霊”に悩まされている12人の患者の脳を分析した。MRIスキャナーを使った分析で、これらの患者の脳は3つの領域(島皮質、前頭頂皮質、側頭頂皮質)で異常をきたしていることが確認された。この3つの領域は、自己意識や空間認識など身体感受の重要な複数の信号、知覚性運動信号(sensorimotor brain signals)を処理しているといわれている。
そして研究チームは“幽霊”の存在を感じることは、脳のこれらの知覚運動性信号が適切に処理されていないことに起因するものだという結論に達した。つまり、幽霊は脳内の現象であるということだ。
昨年12月に「Current Biology」に発表された研究論文では、これを証明するために健常者に“幽霊”の存在を感じさせる実験を行なったことが論述されている。
この実験は、見た目のうえでとても風変わりなものになっている。目隠しと耳栓を装着して視覚と聴覚を遮断された被験者が、目の前にある機器を人差し指で操作すると、被験者の背後にあるロボットのようなアームを持った機器がその動きを正確に再現して被験者の背中を刺激するのだ。例えば人差し指でボタンなどを押すように前方へ突き刺す動きを行なうと、“ロボット”の指が自分の背中を実際に突くのである。
自分の指ではない、ロボットの指による刺激であるが、人間はこれを“他人”とは感じないという。なぜなら、自分が行なった動作をリアルタイムで正確に反映しているだけだからだ。ラジコンを操作したり車やバイクを運転しているときの感覚に近いということだろうか。
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