“血混じりの水疱をハサミでジョキジョキ”―指を壊死させて切断する身体改造


■アンピュテーションをする理由とは?

血混じりの水疱をハサミでジョキジョキ―指を壊死させて切断する身体改造の画像3

――先ほどの“四肢切断症候群”の話(※)は、それが病気かどうかというものですよね。“どうしても四肢がない状態でないとおかしい”というような精神状態であると。先ほどからグランギニョルさんの話を聞いていると、その話とは違うような気がしますね。

(※)四肢切断症候群の話……ドライアイスとおがくずの入ったバケツに足をつけて壊死させ、医者に切ってもらった、という『X51.org』によるニュース。詳しくは前編参照。

「違うと思います」

――先ほどからお話ししていると、快楽や欲求、“痩せたい”とか“綺麗になりたい”という自己実現の願望のように思えるのですが。

身体完全同一性障害というのは、“あること”に違和感がある人たちで、なくなる状態が正しいということですよね」

――そうですね、たとえば性同一性障害の“男性器が付いていることがおかしい”というようなものですね。

「私は自分の体に全く違和感を感じたことがないので、たぶん違うと思いますね。アンピュテーションをやっているから、よくその辺を混同して言われることが多いんですけど、私の中では、身体改造のひとつですね。他にもやりたいことがあるし、アンピュテーションだけがやりたいわけじゃないんです」

――刺青やピアスと変わらないと。

「同列ですね。ただやり方が難しくて、ハードルが高かったという感じです」

――極端にいえば“死ぬかもしれない話”ですよね?

「社会的なリスクを抜きにして、体のリスクだけを考えるなら、そこはあらかじめ含んでおかなければいけないことですよね」

――最初から死ぬ覚悟はしていると。

「みたいなところはあります(笑)。だけど、身体改造の愛好家は、みんな、覚悟をしていると思いますよ」

■指がない不自由に喜びの実感がわく

――身体改造がピアス、タトゥーと大きく違うのは、そのリスクの高さ、取り返しのつかない度合いだと思うのですが、指の切断で変わったことはありますか?

「地元にいる時はやっぱり大怪我だということで、周りからもいろいろ言われましたが、完治してからは誰もなんにも言わないですね」

――言っちゃいけないことだと思うんでしょうね。余計な質問かもしれませんが、ご家族は知っていますか?

「知っていますが、事故ということで通していますね。足は靴下を履いているのでわからないですし、たぶん不幸な人ということになっていると思います。あとは手を握っていたら、あんまり人って気付かないものだと思いましたね」

――ご自身の中では何か変わったことはありますか?

「自分で良かったと思ったのは、私は“不自由”が好きなんだと気付いたことですかね。いわゆるSMにおけるM的なものとは違って、例えば左手で小銭を受け取るとこぼれてしまったりして、そういう不自由を実感できる時がいいんですね」

血混じりの水疱をハサミでジョキジョキ―指を壊死させて切断する身体改造の画像4

――指がないんだ、というの喜びがなんですね。

「もともと、小さな頃から、ギプスとか松葉杖とか眼帯をなんとなく身につけたいという気持ちがあって、それをつけると特別だというような意識がありましたね」

――メディカル・フェティシズムですね。

「そういうものから、これは言葉にしていいのかわかりませんが、いわゆる差別用語である“かたわもの”という存在に惹かれていきました。江戸川乱歩の作品なんかを読んでいる時も、体の不自由な人たちに対する憧れというようなものがあったように思います。“不自由だからいい”というような満足感でしょうね」

――なりたいと思っていたものになれたということでしょうね。では、もうこれ以上切断をしたいという気持ちはないですか?

「願望はまだありますけどね。右手は絵を描いたりするので、とっておこうかなーと(笑)。次にやりたいことは、願望だけを言うと、“ニップルリムーバル(乳首の切除)”をどちらか片方だけやってみたいですね」

――リップルリムーバルは男性でやっている人を何人か見ましたが、機能的に女性の方が難しそうな気がしますね。

「相談してみたらそんなようなことを言われましたね。女性の場合、乳腺とかありますしね。あと本当は傷だけではなくて、顔面をケロイド状にしてみたいんですけど、そうなると社会生活上、言い訳を考えることが困難ですしね。あとは義眼……」

 と、際限もなく自らの体の改造案を挙げてゆくグランギニョル嬢。手の指と足の指を切断してもなお、そのデザインは完成の域とはいかないようだ。

――“私もアンピュテーションをやりたい”という人がいたら、なんと言いますか?

「やはりおすすめはしないですね……。敗血症の問題もありますし。ただ、最近身体改造系のイベントでいろんな人に会ったりしていますけど、あまり“やりたい”って人はいないですね」

――知っている範囲でいえば、ご自身と以前会ったという女性だけですか?

「そうですね。彼女は結婚・出産に嫌なイメージを持っていて、たぶんそれへの行動として左手の薬指を切ったと聞きましたが……私が知っているのはその女性だけですね。どうしてもやりたいって人がいたらガチョーンって切ってすぐに病院に行くことをおすすめします」

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