“血混じりの水疱をハサミでジョキジョキ”―指を壊死させて切断する身体改造
■指を失ったグランギニョル嬢から見た健常者と欠損者
最後に、かなり意地の悪い質問だが、どうしても聞いておきたかったことを。
――自らの願望で指を切断したグランギニョルさんですが、「不慮の事故や病で欠損した人に出会ったら」どう思いますか?
「以前“欠損のある女性へのフェティッシュをテーマにしたイベント”に行ったことがあって、そこには事故で欠損した女の子や生来欠損している女の子が来ていて、やはり改造のために切断をした我々とは相容れないと思いました」
――そうでしょうね。その場合それがコンプレックスとなっていたりする場合も多々あるでしょうし。
「そのイベントのように“欠損が好きな人たち”も存在しているので、それが個性として誇りになったりもすると思うんですが、それでも複雑だと思うんです。ただ、私は基本的には彼女たちと改造をした人間とが理解し合う必要はないと思っていますので。ともすると“羨ましい”って気持ちはあるんですが、どっちが上でどっちが下という問題ではないと思いたいし、彼女たちに憧れてやったということを言うのは、プライドとして嫌なんですよ」
複雑な感情を吐露するグランギニョル嬢。
「でもそういうイベントに来ている人っていうのは“か弱さ”がいいんですよね。“手助けしてあげたい”っていう気持ちになるような対象を求めているというか。それに比べて私のように“自らやる”っていうのはか弱さとは真逆なので、切断のことを会場で説明したらみんなドン引きしていましたね」
■指がないことの不自由が日常になる
誤解を恐れずにいえば、日本に根強く残っている、処女崇拝の思想を考えてしまった。
日本社会は特にその度合いが強いのだが、世界には広く共通の認識として、美容整形で得た美しさは偽物で、生まれたままの状態で綺麗なものだけがいい、という価値観がある。
この“欠損の対立”でいえば、空から降ってきた悲劇は美しく、自ら創り上げた悲劇は美しくないとなるだろうか。
もちろん、悲劇的な犠牲者の存在を否定するつもりは毛頭ないのだが、グランギニョル嬢のように、自らが求める形になるためだけに命を懸けている人間がいるということも知っておきたい。
コルセットで自らの腹部を極限まで絞り上げた貴婦人たちの例もある。くびれを作るためにあばら骨を抜いたというグラビアモデルの都市伝説もある。
人間とサルの違いは、体を改造するかしないかにあるという意見もある。
“医者に嘘をつくのがつらい”と、モラルと美の追求の狭間で揺れているグランギニョル嬢だが、少なくとも誰か他の人間の指を切ったわけではない。
自らの体を使って、必死に理想の形を試行錯誤をしているだけなのだ。
「自傷行為だって思われるのも嫌ですね。そういうことをしたこともないですし。あとはマゾヒズム的な価値観に当てはめられることが多いのも嫌なんです」
――人っていうのは自分が理解しやすいように当てはめるものですからね。
「だから、イベントで会う人のほとんどは私に“身体同一性障害なんですよね”って言っています」
――多くの人は理解できるドラマがほしいんだと思いますよ。人間関係的には、“君の傷まで愛おしい”というようなものがあった方が接しやすいから。
「こっちにしてみればそういうのは全然なんですよね(笑)。私にしてみればもう時間が経って、不自由が日常になっていますから」
グランギニョル嬢は、その人生で、不自由を生きたいだけなのだ。
前編はこちらhttp://tocana.jp/2015/05/post_6413.html
(文・写真=福田光睦/Modern Freaks Inc. 代表)
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