科学ライターがイチ推し! 人工知能(AI)映画『チャッピー』は日本でこそ作られるべき作品だった!?

■世界経済は人工知能中心で動いている

 日本ではSFの世界だと思われている人工知能=AIだが、世界はとっくに人工知能中心で動いている。ブログなどに流れるビッグデータを解析、投資判断を行う「AIファンド」をゴールドマンサックスが提供したり、生物の神経網を模した新しいネットワークで情報処理を行うディープラーニングの開発ベンチャーに7,000万ドルの資金が集まったり、IBMの人工知能ワトソンが食事のメニューを開発したりと、今、ビジネスの最優先事項はAIなのだ。

 その流れを受けて、ここ数年、映画業界でも「AIや脳=記憶」をテーマにした作品が増えている。冴えない中年男が声だけのAIに恋するスパイク・ジョーンズの『her/世界でひとつの彼女』、女性型アンドロイドが全世界を破滅させる『Ex Machina』(日本未公開)などが相次いで公開されたが、今回紹介するニール・ブロムカンプの本作『チャッピー』もそのひとつだ。

科学ライターがイチ推し! 人工知能(AI)映画『チャッピー』は日本でこそ作られるべき作品だった!?の画像2画像は『チャッピー』

 最近のAIをテーマにした作品が、総じてネットワーク社会の行き着く先のディストピアを暗示させるのに対して、チャッピーは実に素直というか、昔ながらのAIがテーマ。つまり起動時には赤ん坊であり、人間と触れ合うことで成長し、人間のような感情を持つようになるロボットが、人間とどう関わっていくのかがストーリーなのだ。


■機械が人間になる、寿命は5日間/あらすじ

 時代は近未来。世界最悪の治安と呼ばれる南アフリカ共和国・ヨハネスブルク(ブロムカンプ監督の出身地)では重犯罪に対抗するため、チタン製のボディのロボット警官=スカウトを投入、目覚ましい治安向上に成功していた。

 そして、スカウトを開発した天才技術者ディオンは、次世代OSとなるAIを開発する。人間と同じように感情を持ち、学習し、成長するプログラムだ。ディオンはスカウトにインストールすることを提案するが、上司に反対される。そこでひそかに破棄処分される1台のスカウトにAIをインストールするディオン。しかし、そのスカウトをギャングに盗まれてしまう。

起動したスカウトは赤ん坊と同じで、環境から言葉や動作を覚えていく。ギャングにチャッピーと名付けられたスカウトは、ギャングとして成長していくが、バッテリーの破損により5日間しか寿命がない。命を知ったチャッピーとギャングたちに、ディオンのライバル、ヴィンセント(ヒュー・ジャックマンが好演!)が策略をめぐらす。ヴィンセントの作った戦闘ロボット「ムース」とチャッピーたちの壮絶な戦いの行方は――?

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