コロンブスが航海に利用した世界地図「マルテルス図」の詳細が最新画像処理技術で明らかに! 巨大耳族が存在した記述も

 コロンブスが大航海に出る前年の1491年に描かれた地図に、当時としては驚くべきほど詳細な情報が記されていたことがわかり話題を呼んでいる。地図の作者はこの時代にどうやって世界中の情報を集めたのか、そしてどうしてこのことが最近になってわかったのか、順を追って紹介しよう。


■コロンブスの航海に使われた世界地図『マルテルス図』

コロンブスが航海に利用した世界地図「マルテルス図」の詳細が最新画像処理技術で明らかに! 巨大耳族が存在した記述もの画像11491年の世界地図『マルテルス図』 画像は「Wikipedia」より

 話題の中心にある世界地図は、1490年~1491年にドイツの地理学者ヘンリックス・マルテルスによって描かれたとされる世界地図『マルテルス図』である。専門家によれば、コロンブスの最初の大航海にこの『マルテルス図』は大きな影響を及ぼしているという。

 この『マルテルス図』は1962年にイェール大学に寄贈されて初めて実際の姿が世に知られることになったのだが、数世紀に及ぶ経年変化で地図の細部や文字が極めて判別し難いものになっており、貴重な史料でありながらも研究は進められてこなかった。

 しかし、最新技術によってこの『マルテルス図』のディテールが次第に解きほぐされ、再び注目を浴びることになったのだ。それを可能にしたのが「マルチスペクトル画像処理」技術である。


■最新鋭「マルチスペクトル画像処理」で15世紀の地図が甦る

 歴史研究者と画像処理技術の専門家がタッグを組んだ研究チームはまず、この『マルテルス図』を最新型のマルチスペクトルカメラで不可視光線を含む異なる12もの光の波長を照射して撮影した。その後、撮影した12枚の画像を専用に開発された画像処理ソフトで解析したのだ。

「我々は考えていた以上の情報を回収することができました」と語るのは研究チームを率いる歴史学者、セ・バン・ドゥザー氏だ。この最新の画像処理技術で、人間の肉眼では見えなかった地図の細部の様子が浮き彫りになり、かすれた文字が判読できるようになったのだ。こうして500年前の世界地図が甦った。

「現在もまだまだ地図上で発見が続いていますよ」と、今回の研究プロジェクト面を担当した画像処理技術研究の単科大学「Chester F. Carlson Center for Imaging Science」のロジャー・イーストン教授は「Phys.org」の記事で言及している。


■独自の情報源から南アフリカ情報を得ていた!?

 この時代はまだ南北アメリカ大陸が発見されていなかったため、『マルテルス図』では大西洋から極東の日本までが描かれているが、地図上にはラテン語でいたるところに地名やその土地の人々のことが書かれているという。

 また、東アジア一帯についての記述はマルコ・ポーロの『東方見聞録』からの引用が多いというが、活字出版された本ではなく、それ以前に僅かに出回っていた写本の『東方見聞録』を参考にしていたと考えられるようだ。

 ディテールが明らかになった『マルテルス図』を詳しく検分することで、様々な発見が今も続いているが、ドゥザー氏が特に注目しているのは南アフリカの一帯であるという。この一帯は川の支流なども細かく描かれ、地名も多く記されているのだ。クラウディオス・プトレマイオスの『ゲオグラフィア(Geographia)』に収録された世界地図を参考にしていると考えられるものの、『マルテルス図』では南アフリカ南端の喜望峰が東へせり出しているという特徴がある。これはおそらく、マルテルスが南アフリカに関するより多くの情報が納められた地図を入手し、参考にしていたからではないかとドゥザー氏は考えている。

 また、この『マルテルス図』が解析されるほどに、後世に与えた影響力の大きさも再発見されることになったということだ。

 世界で最初にアメリカ大陸を描いた世界地図『ヴァルトゼーミューラ図』 (1507年)でも、アフリカ大陸沿岸の地名の多くが『マルテルス図』からそのまま引き継がれているという。さらにコロンブスの大航海も基本的には『マルテルス図』をもとに計画が立てられていたのだ。

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