デンマークの孤島で新発見されたヴァイキングの要塞! 明らかになった、海賊たちの意外な一面とは?
ヴァイキング(海賊)といえば、怒声を上げて斧を振り回すような海の荒くれどもというイメージが強い。だが元来、彼らにとっては交易こそが航海の主な目的だった。とはいえ、貿易と侵攻遠征は別物ではあったが同時期に存在しており、名誉を重んじる彼らが、それを汚された場合に蛮行に及んでいたことは想像に難くない――。
■60年ぶりにヴァイキングの要塞を発掘
また、彼らは陸へ上がれば非常に優れた職人としても知られ、その技は当時、世界最高水準だったといわれている。そんな意外なヴァイキングの素顔だが、先ごろの新発見により、実は彼らが高度な技術を持つ建築業者であったことも明らかになった。
場所はデンマークの首都コペンハーゲンからおよそ南西へ50キロ、バルト海に浮かぶシェラン島だ。ここでヴァイキングが建設したと思われる環状要塞が、国内で5つ目、実に60年ぶりに発見されたのだ。
この古代要塞は直径が145メートル。外周をぐるりと防御壁で囲まれ、精密な幾何学図で成り立つ完璧な円形となっている。東西南北にゲートが設けられ、均等に四分割された中庭には、ロングハウス(樹皮張りの長屋)が建てられていた可能性が高い。ちなみに、この幾何学的デザインはヴァイキングによるイングランド侵略時代に、古代ローマ軍のキャンプを模倣したのではないかと歴史家は考えている。
■イギリス侵攻のための軍事施設だった!?
さて、今回の新発見に貢献したのが最新鋭のテクノロジーだ。ヨーク大学の協力により、同大の研究員ヘレン・グッドチャイルド氏率いるチームが、土壌の磁場における差異を測定するマシンでこの要塞を探り当てることに成功した。チームに参加したオーフス大学の中世考古学者セーレン・シンデバーク教授は、「この驚異的な新技術は要塞の詳細画像を3日もせずに我々に明かしてくれた」と感嘆している。
この要塞は10世紀後半のハーラル一世、もしくはその息子スヴェン一世の時代に作られたという説が有力だ。父のハーラル一世は、ノルウェーとデンマークをキリスト教に改宗させた王として知られ、息子は1013年にロンドンを陥落後、デンマーク人として初のイングランド王位についた人物だ。スヴェン一世は、イギリスへの侵略準備のため、この要塞を軍事訓練施設または兵舎として使用したのではと考えられている。だが、デンマーク・キャッスル・センターのキュレーターであり、発掘メンバーの考古学者ナナ・ホルム氏は、今回の要塞はハーラル一世より以前に建設された可能性もあり、ことによればデンマークの歴史を根底から覆す可能性すらあると述べている。
現在、ごく一部の発掘作業が始まったばかりで、全貌解明までには時間がかかりそうだが、1,000年の歴史を塗り替えかねない新発見からは、しばらく目が離せそうにない。
(文=佐藤Kay)
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