な、なんだってーーー! トンデモ漫画だった『MMR』に科学的にまっとうな点が多数発見される
人類滅亡と聞いて、思い出される漫画作品は、『MMR マガジンミステリー調査班』(講談社、以下MMR)であろう。『週刊少年マガジン』(同)誌上で、1990年から連載が開始され、1年に1~2度のペースで前後編の読切漫画が掲載された。ノストラダムスが人類滅亡を予言した1999年の夏には、10週にわたってレギュラー連載が行われたこともあった。本稿では全13巻に及ぶMMR本編の内容をふりかえってみたい。
『MMR』には、実在の編集者が登場することで知られる。隊長であるキバヤシは、当時は講談社の編集者であり、現在は漫画原作者として活躍する樹林伸がモデルだ。
『MMR』といえば、ノストラダムスの大予言をもとに、あらゆるテーマを人類滅亡に結びつける漫画という印象が強い。だが、よく見ていくと多彩な内容を盛り込んでいることがわかる。
第1巻ではUFO、ミステリーサークル、超能力といったテーマが掲げられ、スプーン曲げで一世を風靡した“清田少年”こと清田益章が登場している。取材時の写真としてキバヤシ以下、MMR局員の写真も掲載されている。第2巻では、2003年に没した霊能者の宜保愛子、第5巻では霊感のある尼僧としてテレビにたびたび登場していた前田和慧が写真入りで登場している。当時はゴールデンタイムでも心霊番組がたびたび放送されており、『MMR』も時流を反映していたといえる。
さらに、1990年代当時の最先端科学にも言及されている。第6巻では、DNAの全塩基配列を解析するヒトゲノムプロジェクトが取り上げられた。不老不死の達成など人類社会の発展に寄与する表向きの目的とは別に、1999年に「絶滅すべき人間と生き残るべき人間の人為的な間引き」が行われると警告する。取材で訪れた研究所で、キバヤシらに出された飲み物が回収され、DNA検査に不合格となる描写もある。ヒトゲノムプロジェクトは2003年に完了。現在は民間レベルで、ストローや、タバコなどから採取したDNAを用いて親子関係や、お互いの相性診断が可能となっている。
■エボラ、狂牛病、遺伝子組み換え…すべて今の問題
第8巻では、突然変異のインフルエンザウイルスや、エボラ出血熱、人間にも感染する狂牛病ウイルスといったテーマが取り上げられている。第10巻では、O-157の流行を受けて、抗生物質の効かない耐性菌の増大の危機などが煽られている。さらに遺伝子組み換え技術が取り上げられ、植物ではなく動物(人間)に用いられたら、と煽られる。これらの問題は現在も未解決のものであり、最悪の事態に陥れば煽りの描写も現実のものとなる。むしろ、冷静な議論に立ち返れば、最先端のテクノロジーを人類がどう扱っていくかという倫理を問うている。その点に関して、MMRは科学的にまっとうな漫画でもある。
だが、今からみればトンデモな内容もある。これこそMMRの本領発揮というべきもので、伊集院光がラジオでネタにしていた通り、1の事実を100にも1000にもしてしまうような展開である。
第7巻では、月の引力が地球環境にもたらす影響を指摘し、日本で大地震が起こる可能性のある日時を具体的に予告。第9巻では異常気象の話題から、ポールシフトが起こり、地球の気候に大異変が起こる可能性を指摘した。第11巻では少年犯罪をはじめとする凶悪犯罪の原因を「f分の1ゆらぎ」の乱れに帰結させる。第12巻では眠気を訴える編集部員に、実は人間の睡眠周期は24.7時間であり、これは火星の周期と一緒である事実が指摘され、人類の火星への回帰かと主張する。
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2024.10.02 20:00心霊な、なんだってーーー! トンデモ漫画だった『MMR』に科学的にまっとうな点が多数発見されるのページです。王城つぐ、第三次世界大戦特集、MMRなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで