ムスカイ・ボリタンテス ― 目の中で動く“虫のようなもの”の正体とは?

■飛蚊症のメカニズム

 網膜におちる影によってあたかも眼球を動き回るやっかいな浮遊体として見えるわけだが、影を作っているのは眼球の大部分を占める硝子体中の細胞小片や赤血球、タンパク質の固まりだと考えられている。

 硝子体は焼き魚の目などに見ることができるゼリー状の部分だ。硝子体の99パーセントは硝子体液とよばれる水分によって構成されており、その中にさまざまな物質が浮遊している。

 ゆえに飛蚊症で見える浮遊体は、眼球を動かすと硝子体液と一緒に動き、眼球の動きを止めてもしばらくは液中を漂うので我々には動いてみえるというわけだ。

 ちなみに、この浮遊体は常に存在しているが、視界の邪魔になるということはあまりない。なぜなら網膜に近くであれば近いほどはっきりとした影をおとすが、そうでないと影自体もぼやけてしまうからだ。ちょうどライトの下に手をかざして机におちる影を見た時、手が机に近いほど影の輪郭がはっきりとするのと同じ原理である。

 また、科学者によれば、「硝子体液中には常に何らかの物質が存在しているため、飛蚊症は常に起きているのです。ただ脳がそれをうまいこと処理して打ち消してくれているので日常我々はそう煩わしく感じないのです」そうだ。


■甘くみてはいけない飛蚊症

 飛蚊症の原因は、眼球の表面を動く虫などでなく、反対に眼球の内部にあるものを見ていたということがお分かりいただけただろうか。

 その多くは誰しもに起きている生理現象なのだが、加齢とともに浮遊体が大きくなったり、視界を邪魔するほどの場合は、放置しておくと網膜裂孔・網膜剥離といった重大な疾患を引き起こす場合もあるのであまり軽視してはいけないと、眼科医は語っている。

 飛蚊症を悪化させないためには、紫外線から目を守るためにサングラスをかけたり、偏光グラスを使用するのも効果的だ。そうすることで活性酸素が硝子体液内につくるタンパク質などを抑えることができるのである。またスマートフォンやパソコンなどで目を酷使するのも避けたい。

 昔から気になっていた方も多いと思われる飛蚊症であるが、実は健康のバロメータだったのである。もし視界に浮遊体が見える時は、目を優しくいたわって何らかのケアをし、大切にしたほうが良いだろう。

(アナザー茂)

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