いまだ解決できない物理学上の9つのミステリー【前編】

■なぜ時間は一方向に進むのか?

 宇宙の特性として、エントロピー(乱雑さ)は増大する一方で、そのエントロピーを逆転する方法がないからこそ、時間は一方的に進むと考えられている。エントロピーの増大とは(ちょっと危険だがものすごく乱暴に言ってしまうと)、水の入っているコップにお湯を注いだ時には自然に混ざってぬるま湯になるが(混ざる=エントロピー増大)、逆にぬるま湯を熱湯と冷水に分離することはできないという例に置き換えることができる。

 閉鎖された環境の中では、他からなんらかのエネルギーが加わらない限り、整った状態から乱雑な状態へと進んでいくということで、エントロピーは低い状態から高い状態へと移っていくことになる。そこで問題になるのが、「なぜ宇宙は過去にエントロピーが低い状態であったのか?」という疑問である。言い換えれば、莫大なエネルギーが小さな空間に詰め込まれていたものが爆発し、膨張している宇宙だが、ではもともとの整った状態である宇宙とはどういうものなのだろうか? と、いうことなのである。

いまだ解決できない物理学上の9つのミステリー【前編】の画像2画像は「Wikimedia Commons」より

■パラレルユニバースは存在するのか?

 天文物理学上のデータにおいては、時空は曲面ではなく完全な平面であり、したがって時空は永遠に続いているものと考えられる。もしそうであるならば、宇宙と考えられている領域は、単につなぎ合わされている多元宇宙(マルチバース)の一部分であることになり、量子力学的にはそれぞれの宇宙には有限の組み合わせ(10の10乗の122乗)が無限に繰り返されていることになるということになる。

 有限なモノの組み合わせを無限回繰り返すということは、例えば私たちの宇宙の組み合わせと全く同じ組み合わせをもった同じ宇宙が存在する可能性や、粒子1つ分だけずれている組み合わせ、2つだけずれている組み合わせから、すべての組み合わせが異なっている宇宙まで、無限に平行した宇宙が存在するということになる。このロジックは正しいのであろうか?

 もしこのロジックが正しいとすれば、その幾重にも平行する宇宙の存在は確認することができるのか? これも、未解決の問題であるとされている。


※【後編】へ続く。

(文=高夏五道)

参考:「Disclose.tv」ほか

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