過去に行くタイムトラベルは可能?超光速状態でのタイムリバースが確認される
こうして月面の中心付近にレーザー光の点が照射されたとして、次にレーザーポインタを持つ手をクイッと動かして点の位置を移動させてみるのだ。その際、手首はなるべく早く動かす(1.3秒以内)。理論上は、1ミリでもレーザーポインタを持つ手を動かせば、角度が変わったレーザー光が再び1.3秒の時間をかけて月面の違う部分に到達することになる。とすれば手の動きから遅れて点が動くように思えるのだが、実際には手の動きにダイレクトに反応しているよう(僅かな遅れはあるかもしれないが)に見えるはずであるということだ。光本体よりも“光のようなもの”が先に月面に到達しているからだ。これが「光前線」現象であり、実はわりと簡単な原理で“超光速”は身近に起こっていたのだ。
もちろんこの「光前線」はあくまでも“現象”であって、光の粒子が実際に光速を超えて移動することはない。“光のようなもの”が光速を超えて先に到達している現象なのだ。しかし、たとえ“光のようなもの”であっても光速を超えているため、時間を歪ませる要素を持っているということのようだ。
実験では、湾曲した壁を用意し、そこにレーザーを照射して位置を動かし続けることで、“超光速”状態である「光前線」現象を発生させた。そしてこの状態の光の光波を、1兆分の1秒単位のシャッタースピードを持つというスーパーハイスピードカメラで連写したのだ。すると撮影された光波の状態は、明らかに“巻き戻し”状態で写ったというのである。つまりこの実験で、光速を超える「光前線」現象が時間を過去へとさかのぼらせる「タイムリバース」を引き起こしている可能性が指摘されることになったのだ。
音速を超えることで音楽が逆再生で聴こえるように、光速を超えたものを扱うと周囲の景色が過去に向かって逆再生されるということになるのだろうか。もちろん研究はまだ初期のステージにあるが、今後の動向が大いに気になる研究分野であることは間違いない。
(文=仲田しんじ)
参考:「Live Science」ほか
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