太陽系の最果てまで10年 ― 宇宙ヨット「Eセイル」の開発にNASAが着手!

 宇宙空間において物理燃料を燃焼させて推進力を得て進んでいく宇宙船はもう古いと言われる中、さまざまなアイデアや理論に基づいた全く新しい推進力を備えた新型宇宙船開発の話自体は決して目新しいものではない。


■帆に陽子を受けて進む宇宙ヨット

 宇宙船開発においては、まったくもって「トンデモ科学」がベースになり、実際あり得るのかどうかも怪しいシステムから、理論検証や物理検証まで行い、実験機の準備段階にまでたどり着いているような期待度の高いものまでさまざまであるが、イギリス「Daily Mail」紙のレポートによるNASAの宇宙ヨットの開発は、その中でもかなりの実現性が高い研究ではないだろうか。

 この宇宙ヨット(あえて宇宙船という言い方はしないようにする)の推進力は、Eセイルとよばれる帆が陽子を受けて、その反動で推進力を得るという。まるで帆が風をはらみ進む帆船やヨットのように、極めて単純な理論に基づいたものであるが、このシステムの画期的な部分は、自らエネルギーを産み出すための燃料を必要としないことにある。

太陽系の最果てまで10年 ― 宇宙ヨット「Eセイル」の開発にNASAが着手!の画像2画像は「NASA’s Marshall Center」より

 コロナと呼ばれる太陽の表面は100万度以上の超高温となり、気体が電子とイオンに分離されたプラズマ状態になる。このプラズマ化された気体は、太陽の重力に縛られることなくものすごい勢いで宇宙空間に放出され、風のように飛んでいく。この太陽風に含まれている陽子をEセイルと呼ばれる電磁的な帆で受けて、その反発で進んでいくのがこの宇宙ヨットの基本的な仕組みである。理論的には、このシステムで宇宙ヨットが推進力を得れば、惑星探査船ボイジャーが30年かかって到達した太陽系の最果てヘリオポーズまで、わずか10年で到達できるという。

 新型推進力のアイデアとしては、決して目新しいものではないが、効率良く陽子を受けることのできる帆の開発は難しいとされていた。

 そして今回、NASAによって実験が開始されたEセイルは、ヘリオポーズ静電ラピッドトランジットシステム(Herts)と呼ばれ、10本から20本の電荷がかかっている直径1ミリメートル、長さ12マイル半になるアルミニウム線を放射状に張り、219個分のサッカー場と同等の面積にひろげて陽子を受けるというものであるという。

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