5月に元海兵隊員による女性への暴行、殺害事件が起きた沖縄。事件への抗議として今月19日に開かれた県民集会には6万5000人(主催者側発表)もの県民が集まり、被害者女性への追悼と在沖海兵隊の撤退などが訴えられた。戦後70年を過ぎてもいまだ多くの問題を抱えているのは、沖縄の1つの現実だ。
『沖縄のことを教えてください』という写真集をご存じだろうか? これは今年4月に日本写真協会賞新人賞に選ばれた写真家・初沢 亜利が沖縄に真っ向から向き合い撮影した写真集だ。沖縄をテーマにした写真集はこれまでも、多くの写真家の手によって出版されてきた。なかでもこの『沖縄のことを教えてください』は独特だ。一言で言うと、眼差しがフラットなのだ。
■特別ではない沖縄を撮った“特別な写真集”
沖縄の写真集にはいくつかの傾向がある。代表例は「楽園」をイメージさせるものだろう。青い海と白い砂、燦々と照る太陽、静かに優しく微笑みかけるおばあの住む癒しの島などなど、いわば、本土の消費者が期待しがちなイメージを表したものだ。一方で、土着の風物や神事といった沖縄固有の文化に着目し、民俗学的な部分に焦点を当てたものもある。太平洋戦争の惨劇やいまだ解決を見ない基地の島としての側面を写し出し、政治的な観点から告発する報道的なものも多い。