【脳科学】芸術鑑賞が“変性意識”を生み出していたことが判明!最新の実験が200年前の哲学説を裏付けた!=オランダ
次のような場面を想像して欲しい。あなたは太平洋のど真ん中、古めかしい帆船に乗っている。ふと沖に目を向けると嵐を予感させる暗雲が立ち込めていることに気付く。もし嵐に巻き込まれてしまったら、こんなボロ船ではひとたまりもない。その時、あなたはどのような感情を抱くだろうか?
■美しさの鍵は距離が握っている?
このような状況では、多くの人が“恐怖”を感じることだろう。だが、それと同時に、ウィリアム・ターナーが描く絵画のような自然の壮大さを前に、自身の身の危険を度外視して「美しさ」や「崇高さ」を感じることもあるのではないだろうか?
このように、「生活上の利益」から「対象」を切り離してはじめて「美しさ」を感じることができると20世紀イギリスの美学者エドワード・バローは主張し、そのことを「美的距離」(aesthetic distance)と呼んだ。
18世紀の大哲学者イマニュエル・カントも“美”や“崇高”について考察した『判断力批判』で同様のことを述べており、「美的判断は無関心」であると定義している。同書はカントの著作の中でも最凶に難解とされているが、彼が言わんとしていることを、誤解をおそれず簡潔にご説明しよう。
たとえば、見知らぬ人から数百億円相当の金貨を貰ったとしよう。普通ならば、「好きなものが買える」とか「死ぬまで働かなくて良い」とか、金貨の金銭的価値のために心が高揚するだろう。当然ながら、このような感情は“美”を感じているとはいえない。そうではなく、時間を忘れて何時間も絵を描いてしまった時のように、ただただ金貨の輝きに心が奪われ、「快い」感情に満たされている時、あなたは“美”を感じているのだ。
カントやバローはこのような結論に理論的帰結として到達したが、実証的に証明されることは今までなかった。しかし最新の研究で、芸術作品を鑑賞する際に脳に変化が生じていることが判明。なんと、200年前の哲学説が脳科学的にも根拠のある理論だったことが証明されたというのだ。
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