「この世がマトリックスの可能性は50%」メリルリンチの衝撃調査結果が波紋呼ぶ
この世はリアルかフェイクか――。この深遠な謎をめぐって古来から宗教や哲学、芸術などで数多く解明の試みが行われてきた。そして現在、この謎は「シミュレーション仮説」として科学者たちが挑む謎のひとつにもなっている。さらに昨今、この謎は実業界でも大いに議論されているのだ。
■メリルリンチ「我々の世界は50%の確率で仮想現実」
「この世は技術的にとても進んだ文明によって、微に入り細に入り創られた豊かなシミュレーションソフトウェアである」――。英・オックスフォード大学のニック・ボストロム教授が提唱したこのシミュレーション仮説は、世界中の多くの科学者を触発し今も議論は白熱している。
科学者だけではない。先日、投資銀行・メリルリンチのシンクタンクが、「我々の世界は50%の確率でシミュレーションソフトである」という驚くべき発言を行っている。いったいどういうことなのか。
現在はバンク・オブ・アメリカ傘下の投資銀行であるメリルリンチが先日、顧客に向けて配布した経済予測レポートが話題を呼んでいる。レポートでは今後の経済において現在成長がめざましいVR、ARの分野の重要性を特に強調しているのだが、その中で「我々はすでに20~50%の確率でバーチャルワールドに住んでいる」という記述があるのだ。
さらにニック・ボストロム教授をはじめ世界的実業家のイーロン・マスク氏や天体物理学者ニール・ドグラース・タイソン氏らの言葉を引用して、未来の人類がどこかの時点で過去の人類、つまり現在の我々をシミュレーションする決断を下した可能性があることを指摘している。我々はすでに未来人が作ったシミュレーションソフトの中の存在である可能性が高いというのだ。
■マスク氏「我々が“天然”な世界に生きている可能性は数十億分の1」
ここで基本に立ち返り、ニック・ボストロム教授が提唱するシミュレーション仮説を少しおさらいしてみよう。シミュレーション仮説によれば、次の3つのシナリオのうちのどれかひとつが真実である。
1. ほとんどの文明は技術的に成熟する前に絶滅した。
2. 十分に成熟した技術を持ったほとんどの文明はシミュレーション装置を作る興味がない。
3. 我々人間は実際にコンピュータ・シミュレーション上で生きている。
そしてもちろん、“3”が真実であると仮定しており、今回のメリルリンチの報告でも20~50%の確率で“3”であると主張しているのである。
逆にもし現在の我々がコンピュータ・シミュレーションの世界に住んでいないとするならば、未来人は高度なシミュレーション装置を作る技術に到達しないまま(恐らく滅びた)なのか(1)、過去の人類(今の我々)をシミュレータに閉じ込めて操る決断を下さなかった(2)ことになる。もちろんこの2つも十分にあり得ることである。
だが昨今急激に技術進歩を遂げるVR、AR分野の状況を見ると、どうやら将来の人類は現実とまったく見分けがつかないほどの仮想現実空間を造るところまでイノベーションを遂げる気配が濃厚になってきたのだ。
米・カリフォルニア州ランチョ・パロス・ベルデスで5月31日から6月2日にわたって開催されたIT業界イベント「コードカンファレンス」で、イーロン・マスク氏は「我々が“天然”な世界に生きている可能性は数十億分の1」と発言し、氏にとっては50%どころかほぼ確実に現在の我々がコンピュータ・シミュレーションの中で生きていることを指摘して物議を醸した。やはりこの世はフェイクだったのか――。
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