かじり取られた体のまま生き続ける「怪魚」が発見される! 生き長らえた“本当の理由”を理学博士が解説

――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答えるシリーズ

 お腹をパクッと大きくかじられた跡のある不思議な形状の魚の画像が、SNSや海外ニュースサイトで話題になっている。問題の魚は、米ニュージャージー州のラリタン湾で地元の釣り人エディ・グラントさんによって釣り上げられた体長47センチほどのカレイだ。

かじり取られた体のまま生き続ける「怪魚」が発見される! 生き長らえた本当の理由を理学博士が解説の画像1画像は「Woodbridge Patch」より引用

そのカレイは、腹の真ん中が大きく丸くえぐり取られてているものの、驚くべきことにその傷跡はきれいに治っていたという。画像を見ると、問題のカレイは確かに腹部が半円状に欠損しているが、その傷は滑らかに塞がっている。釣ったエディさんは、サメかオキスズキに襲われたのではないかと推測しているようだ。

 それにしても、これは一体どういうことなのだろう? こんな状態で、生物が平然と生きつづけることなど可能なのだろうか? 生物学に詳しい理学博士X氏に解説してもらった。


■理学博士が語る、カレイが生き長らえた理由

「これは恐らく、襲われた時に幸運なことに内臓をやられなかったんでしょうね。白い側(裏面)を写した画像を見てください。カレイの内臓は、エラと傷口のちょうど中間あたりにまとまっています。よく見ると、内臓が入っている部分がボコッと膨らんでいるのがわかると思います。内臓の位置は捌いてみると一目瞭然なのですが、姿煮などでも確認はできると思います」(理学博士X氏)

 実際、居酒屋でカレイの姿煮を食べる前に観察すると、内臓の入っている空間は腹部の前方半分くらいで、意外と小さいことがわかる。問題のカレイが食われたのは内臓のない、肉と骨だけの部分だったのだろう。サンマなどの魚だと、内臓は腹側に沿うように細長く配置しているから、腹を食い破られた時点で内臓も損傷してしまうとのこと。

 しかしそれにしても、である。いくら内臓をやられなかったとはいえ、これだけ大きく傷つけられた後、回復するまで生き延びられるものなのだろうか?

「魚の生命力はすごいですよ。一昔前は、活魚を活け造りにした後、頭と骨だけにして水槽に戻して泳がせるパフォーマンスをやっている居酒屋があったくらいです。カレイは海底の砂地や泥の中に潜んで暮らす生物です。怪我をして弱っていた時も、そうやって隠れていられたから、他の生物に襲われずに済み、無事に回復できたのかもしれませんね」(理学博士X氏)

 なるほど、体の構造や生態などのさまざまな幸運が重なり、このカレイは痛々しい怪我の痕を残しつつも生き残ったのだ。写真を撮った釣り人のエディさんは、生命力の強さに感嘆し、撮影の後、このカレイをリリースしたそうだ。またしてもなんという幸運だろう。エディさんによると、リリースされたカレイはロケットのように泳ぎ去ったそうだ。カレイの寿命は数十年に及ぶという。幸運のカレイが、これからも長生きできることを願おう。

(吉井いつき)


参考:「Woodbridge Patch」、「岩手県水産技術センター

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