2千年前のマヤ文明期に“ハイパー高速道路”が存在したことが判明! もはや“州”レベルの超巨大都市とは?

■“都市”というよりもはや“州”!?

 最盛期、エル・ミラドールに暮らす100万人とも見積もられる住民が、この道路を利用していたようだ。

「今回、LIDARによって得られたデータによると、エル・ミラドールは政治的に閉じた都市だったようです。上空から見ると柵のように見える道路は、個人レベルでの、製品や食物などの輸送に使用されていたと考えられます。これは、いうまでもなく、この時代としては極めて稀な例です。他の地域では、小規模な農園に頼って生活するのがやっとでしたから」(ハンセン氏)

 やはり、道路は外の都市には向いていないようで、都市内部の移動、輸送に利用されていたようだ。この都市で、2000年ほど前に個人レベルでの取引が行われていたなら、市民の生活水準は極めて高かったと予想できる。しかし、ハンセン氏が言うには、100万人が暮らし栄華を極めたこの都市も、マヤの他の都市と同様に、突然放棄されてしまったようだ。

「(エル・ミラドールは)西暦150年ごろ放棄されてしまいますが、それ以前は地理的(総面積2,158平方km)にも人工的にも、同時代の世界で最も巨大な都市だったと言えるでしょう。州と呼んでもいいかもしれません」(ハンセン氏)

 2,158平方kmという広大な面積を持つなら、氏が言うように州と捉えた方がよさそうだ。そしてエル・ミラドールには、国家に近い行政制度もあったのではないだろうか。今回発見された、エル・ミラドール中に張り巡らされた碁盤の目状の道路は、ハンセン氏が推測するように個人レベルの取引が行われていたとも考えられるが、背後にはエル・ミラドールを支配する強い権力の存在が見え隠れする。道路建設のため、莫大な労働力を動員する力が存在しただろうし、そう考えるとこの道路は、統治者の権力を象徴するもの、例えば年貢を納めるための道路のようにも思えてくるのだ。

 いずれにせよ、まだ道路は発見されたばかり。今後の調査により、エル・ミラドールの全貌と、州とさえ呼べる巨大都市がなぜ放棄されたのか、明らかになる日が来ることを期待したい。「マヤ文明の崩壊」は依然として謎に包まれているのだ。
(坂井学)


参考:「MYSTERIOUS UNIVERSE」、ほか

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