常識覆す「第五の力」? 未知の素粒子「プロトフォビックXボソン」発見でパラレルユニバースの扉開く
空間を満たしている物質には、いまだにその存在が確認できないダークマター(暗黒物質)がある。一説によると、宇宙空間の85%におよぶ物質がこのダークマターであるともいわれているが、その存在はあくまでも物理的推論を重ねていった上での仮説であり、その存在そのものが確認されているわけではない。
■自然界に存在する5番目の力の発見か
しかし、このダークマターの存在を立証することさえも可能にし、物理界の常識を根底からひっくり返してしまうような新しい発見がなされた可能性があるという。「発見された可能性」という、なんとも曖昧な表現になるのは、その発見が素粒子の世界での話であるために、発見したと断言するには緻密で時間のかかる検証実験が必要とされているためである。
この、ニュートン物理学をひっくり返したアインシュタイン物理学のような物理界の革命的発見のレポートが、イギリスの「Express」紙で取り上げられている。
米カリフォルニア大学アーバイン校の研究によれば、スイスのジュネーブ郊外にある世界最大の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)による実験の結果によっては、自然界に存在する5番目の力の発見につながる可能性があるとのこと。実験を率いるジョナサン・フェン博士は「もしこの発見が真実ならば、物理界を革命的に変えることになる」と発言している。
物理の世界では、ここ何十年もの間、自然界に存在する力は重力、電磁力、強い力(核力)、弱い力の4種類であると考えられており、もしここに5番目の力の存在が確認できれば、根本的に物理のセオリーを覆すことになり、既存の理論では説明できなかったダークマターの証明はもちろん、パラレル・ユニバースの存在をも証明する可能性がでてくるという。
■素粒子「プロトフォビックXボゾン」とは
そもそもこの第5の力の存在の可能性の発見は、ハンガリー科学アカデミーでアッティラ・クラスナホルカイ博士らが行っていた実験に端を発する。博士らは、ダークマターを示す可能性のあるダークフォトン(暗黒光子)の発見を目指して実験を行っていた際に、偶然リチウムが崩壊し、ベリリウムに変容していく過程で、ある一定の条件下では通常の電子よりも約30倍の重さを持つ粒子が放出されていることを発見した。つまり、未知の素粒子の発見であった。
ひとまずクラスナホルカイ博士らは、この新しい素粒子がダークフォトンではないとしたものの、この素粒子がいったい何であるかについての確証を得ることはできなかった。当初このハンガリー科学アカデミーによる発表は、物理界においては半信半疑の域を出ない論文とされていたが、フェン博士などによる検証実験の結果、同じ現象が確認されこの電子よりも約30倍重い素粒子の存在が明らかになったわけである。
フェン博士によって「プロトフォビックXボソン」と名付けられたこの素粒子は、残念ながら、やはりダークフォトンではなかったが、素粒子物理学の壁を破る第5の力の存在を示す可能性を秘めているとのことである。
この第5の力の存在が証明されれば、現在行き詰まっている宇宙物理や素粒子物理を一気に解決する鍵に成り得るとされており、現在、ジュネーブにあるLHCでは検証実験が繰り返されている。
(文=高夏五道)
参考:「Express」、ほか
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