ゲーム「Fate」に登場する冥界の女王「エレシュキガル」の性質を徹底解説 ― 底なしの性欲と圧倒的な死の力(前編)
■第一の神話「イナンナの冥界下り」
こちらは「イナンナが、エレシュキガルの統治する冥界(地下世界)へ降りてきたことによる大騒ぎ」の物語で、紀元前2000年期前半ごろに今日まで伝わる形として書き留められた、数多くの大小の文章から再構成されたものです。
物語は唐突に、イナンナが何らかの理由から(天界と地上を支配するイナンナが、姉エレシュキガルに代わり冥界をも支配しようと求めた、と予想されているが、正確にはよくわかっていない)、冥界へ下ることを決意した場面からはじまります。
イナンナはあらゆる聖堂を捨て去ると、数多くの宝石や装飾品、貴婦人の服(バラの衣装)などで身を飾り、エレシュキガルの許可を得た上で、7つの門をくぐり冥界へと下りていきます。
ですが、エレシュキガルはイナンナの来訪と、彼女がきらびやかに着飾っていることの報告を聞くや「ふとももを打ち、唇を噛んで」大きな怒りを露わにしていました。そしてエレシュキガルは、7つの門の門番たちに「イナンナが1つの門をくぐるたびに、少しずつ持ち物や服を取り去れ」と命じるのです。
イナンナは門をくぐるたびに抗議するのですが、門番たちは「冥界の掟が実行されたのです、冥界の礼拝法規をとやかく言ってはいけません」と相手にしません。冥界の掟には、たとえ神であれども逆らうことはできないのです。
最終的にイナンナは全裸にされてしまうのですが、彼女はこれが冥界へ下る人間と同じ扱い、ということに気が付きません。このように7つの門をくぐり抜けた先には、冥界の女王エレシュキガルと裁判官たちが控えていました。そしてイナンナは判決を下され、エレシュキガルの「死の目」を受けて命を奪われます。
これに際してエレシュキガルは「イナンナに向けて怒りの言葉と罪の叫びを発した」とあり、エレシュキガルの怒りがいかほど強いものであったかが表現されています。
この後、イナンナの死体は全裸のまま木釘に掛けられ、三日三晩放置されました。
やがて、イナンナが帰ってこないことを受けた彼女の使者が、天界の神々に助けを求めました。そしてイナンナを連れ戻すために2つの生き物が作られ、小さく化けて門をすり抜け、持ってきた「生命の食物と水」によってイナンナは復活し、冥界から脱出します。
ですがイナンナは、追いかけてきた冥界の鬼神たちから「冥界の掟によって、あなたが冥界を出るのならば、その身代わりを冥界へ置かねばならない」と詰められます。
イナンナは天へと昇る道すがら、鬼神から様々な者を身代わりに差し出すよう求められるのですが、皆がイナンナの死に悲しんでいたことを理由に断ります。
やがてイナンナは「妻イナンナが死んだ事にまったく悲しまず、哀悼の態度を取っていなかった」、夫である牧神ドゥムジを見付けました。それを見たイナンナは夫に激しい怒りを覚え「ドゥムジを冥界へ連れて行ってしまえ!」と鬼神に言い放ち、ドゥムジは冥界へと連れ去られるのでした。
物語はここで終わるのですが、これとは伝承系統の異なるものの、内容の一致する物語の断片がいくつか存在します。それで語られる結末は断片的ではっきりとはしていませんが、それによればドゥムジの姉が冥界の身代わりを買って出たらしく、ドゥムジとその姉は6ヶ月ごとに、交互に地上へ出られるようになったそうです。
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2024.10.02 20:00心霊ゲーム「Fate」に登場する冥界の女王「エレシュキガル」の性質を徹底解説 ― 底なしの性欲と圧倒的な死の力(前編)のページです。シュメール神話、女神、たけしな竜美、イシュタル、エレシュキガル、冥界などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで