ゲーム「Fate」に登場する冥界の女王「エレシュキガル」の性質を徹底解説 ― 底なしの性欲と圧倒的な死の力(前編)

■第二の神話「イシュタルの冥界下り」
 こちらの神話は、イナンナがイナンナから派生した女神イシュタル、と名前を変えているだけで、先述した「イナンナの冥界下り」とほぼ同一のストーリーが語られます。ただし、こちらは原文に断欠部分が多いため、非常に短くまとまっているように見えます。

 この神話において、イシュタルが冥界に下る目的は「地下に姿をかくしたタンムーズ(ドゥムジ)を連れ戻すため」と明らかになっています。また「冥界を下るも上るも、7つの門を通らねばならない」というルールが強調されており、冥界と地上を行き来するのが非常に困難なこと、という観念がはっきりと伺える内容です。

 他にも、冥界の様子やイシュタル(イナンナ)の殺され方、また各描写におけるエレシュキガルの怒りがより詳細に強く描写されています。

 まず冥界については「エレシュキガルの住まいは”暗黒の家”。入るものは二度と出られず、住む者は光を奪われる。彼らにとっては埃(ホコリ)がご馳走で、粘土が主な食べ物。光は一切見られない暗闇に包まれている。着物は鳥のように翼がついている」とあり、相当にひどい世界であることが伺えます。

 また、イシュタルが殺される際の描写は、エレシュキガルが怒りに震える様子と「邪気(死の目)」を向ける描写、そしてイシュタルが姉の怒りに気が付かない点が強調されており、「命令を受けたエレシュキガルの侍従によって、イシュタルの全身に向けて60の邪気が放たれた後、イシュタルはエレシュキガルの宮殿に閉じ込められた」とあります。ただし、こちらではイシュタルの生死は不明です。

 他にも性愛の神でもあるイシュタルが、地上から姿を消したことの弊害が語られています。それによれば、地上の生き物すべてが生殖行為をやめてしまい、神々も力を失っています。

 そしてエレシュキガルの怒りに関しては、その来訪に対する怒りがより詳細に語られているほか、イシュタルを連れ戻しに来た者に対して「腰を叩き、指を噛んで」怒っています。さらに使者に向かって「お前を呪ってやる。イシュタルを復活させたら私の前から連れ去れ」と吐き捨てました。

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