関西に実在した呪いで人を殺せる女! 憎しみと暴力が少女を覚醒、母娘の念で9人死んだ「呪殺ダイアリー」前編

関西に実在した呪いで人を殺せる女!  憎しみと暴力が少女を覚醒、母娘の念で9人死んだ「呪殺ダイアリー」前編の画像2画像は「Getty Images」より引用

 現在39歳の山上恵子さんは、関西地方の旧家に生まれた。父方、母方、ともに先祖は武家の家柄で、どちらもかつては豪壮な屋敷を構え、明治大正の頃は素封家と呼ばれていた。

 しかし昭和恐慌の辺りから両家とも斜陽となって、恵子さんの両親が生まれた頃には、旧家といっても単に家屋敷が古いだけで、内実は火の車といったていたらくだった。

 まったくほめられたことではなく、腹立たしいかぎりだが、昭和時代には、親が女の子の教育……どころか飲み食いさせる金すら惜しいときに、「女に学問はいらない」という便利な言葉と、有無を言わせずに嫁がせるという手段があった。この悪習は60年代になってもまだ残っていたと見えて、恵子さんの母は16歳で結婚させられ、17になる前に第一子を生んだ。男の子だった。

 二番目の子と三番目の子もいずれも男児だったが、物心がつく前に原因不明の急病で死んだ。第四子と第五子、恵子さんと三つ上の姉は生き延びた。

 恵子さんの最初の記憶は、目の前で悶え苦しむ父の姿だ。

 血の泡を吹きながら右に左に畳の上をしばらく転げまわっていたが、やがて動きが鈍くなり、胎児のように体を丸めて痙攣するだけになった。

 静かな座敷の中で、恵子さんは父の死の一部始終を眺めていた――が、それが実の父だったということすら、そのときの恵子さんにはわからなかった。まだ3歳だったのだ。人の死も理解できてはいなかった。

 ……父はそのうちまったく動かなくなった。母が来て、部屋から連れ出されるまで遺体を眺めていたようだが、その辺りの記憶は曖昧だという。

 父の死後、恵子さんの母は下の2人の子を連れて、両親が住む実家に戻った。長男はすでに23歳で、この機に独立して家を出ることになり、祖父母と母と姉と恵子さんとで暮らしてゆくことになるかと思われた。

 祖父母は出戻った娘に家事の一切を押しつけ、孫娘にも冷淡だったから、幼い恵子さんはひとりで放っておかれることが多くなった。

 しかし、一緒に暮らしだしてから間を置かず、祖父母も立て続けに亡くなってしまった。

 どちらも60代で、まだ寿命を迎えるような歳ではなかった――それを言ったら父や乳幼児のうちに死んだ兄たちは、祖父母よりもっと死ぬには不自然な若さで逝ったわけだが。

 遺産相続に伴う財産整理で、恵子さんの母は家の地所の大部分を売り払った。母屋だった屋敷ひと棟と2百坪あまりの庭を残して、あとは全部手放し、最寄り駅近くのレストランで働き始めた。

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