関西に実在した呪いで人を殺せる女! 憎しみと暴力が少女を覚醒、母娘の念で9人死んだ「呪殺ダイアリー」前編

関西に実在した呪いで人を殺せる女!  憎しみと暴力が少女を覚醒、母娘の念で9人死んだ「呪殺ダイアリー」前編の画像3画像は「Getty Images」より引用

 恵子さんは、母が泣いているところを見たことがない。涙を見せないというよりは、肉親が死んでも少しも悲しまない人だったのではないかと思う……と彼女は語った。

 だから私は、ふと、あまりにも都合よく死にすぎるのではないかという疑念を抱いたのだった。

 一般的に女の子に比べて育てづらいと言われる男の子たち、実の娘を女中扱いする両親。もしかすると夫とも感情的ないさかいがあったかもしれないではないか? 彼らはみんな、恵子さんの母親の立場から見て都合の悪い人々で、そして必ず死んでいる。そんな気がして……。

「みんな病死ですよ。脳溢血やクモ膜下出血、心不全。突然、急死したから全員、司法解剖を受けているはずですが、問題にされたことはありません。でも、川奈さんのように怪しむ人がいるのも当然ですよね」
「ええ。でも、タイミングよく死にすぎる気がしてしまいます。失礼かなと思いながら、どうしても……」
「わかります。だから私は、母にも、憎んだ相手を死なせる力があったのだろうと思っています」
「お母さんにも? ということはつまり……?」

 恵子さんが5歳のとき、母が再婚した。新しい父は若さと逞しい肉体以外取り得が見当たらないような無職の男で、すぐに恵子さんに暴力をふるうようになった。

 当時、恵子さんは幼稚園に行かせてもらえず、日中ずっと家にいた。母はレストランに車で通勤しており、夜にならないと帰宅しない。姉は小学校中学年で、逃げ足が早く、昼間は学校に行っている。

 姉と母が出掛けたあとは、家には恵子さんと継父だけになる。

 築百年を超す瓦葺きの屋敷、周囲は広い庭と雑木林。隣家は遠く、悲鳴は届かない。

「継父は子どもの頃、親によく殴られていたようで、『この家にはおまえを殴る人間が誰もいないから俺が殴ってやるんだ』というのが口癖でした」
「お母さんは気がつかなかったんですか?」
「顔がパンパンに腫れていても痣が出来ていても、見てみぬふりでしたね。継父は母より何歳も年下で、母は彼に夢中だったようです。よくお小遣いを与えていました。金を貰うと外出してくれるので助かりました。真夜中に酔っ払って帰ってきて、母と口論になるのが、うるさくて苦痛でしたが……」
「本当にろくでもない男ですね!」
「あるとき本当に酷く殴られて、倒れたところを足蹴にされ、体が痛くて動けず廊下の隅に転がっていたら、母が仕事から帰ってきました。継父は母から金を奪い取って、出掛けていきました。私は横たわったまま、出ていこうとする継父の背中を見て『この人は要らない』と思いました」

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