犬のお墓にまつわる本当にあった超怖い話 ― 四国「犬神信仰」の祖母が遺した“死の祟り”(川奈まり子)

kawana16-8.jpgイメージ画像は「Getty Images」より引用

 結局、彼の父はパジャマ姿で便座に座ったまま事切れていた。

 無断欠勤した日の前夜か明け方にトイレで用を足そうとして心臓発作を起こし、そのまま亡くなってしまったのだろうという検視結果が出された。

 けれども秋山さんは、犬に追われてトイレに立て籠もったのに違いないと考えた。その結果、心臓が止まったのだ。恐怖の余りショック死したのだろう。

「父はパジャマのズボンや下着をちゃんと穿いたまま死んでいましたからね。父の妹である叔母さんたちも私と同意見でした。2人はとても怖がって、一緒にお祓いをしてもらったと話していましたが、それから1年しないうちに上の叔母が交通事故に遭って亡くなり、最後に残った下の叔母も自殺してしまいました。

 下の叔母は、自死する前に私の家に電話を掛けてきて、電話に出た妻に最近飼いはじめた犬の話をしたのだそうです。この叔母は祖母のような犬好きで、ずっと犬を飼っている人でしたが、なぜうちに電話を寄越したのかわからないと妻は話しておりました。告別式のときにこの叔母と同居していた従弟にこの話をしたところ、従弟は奇妙な顔をして、最近飼うようになった犬なんかいないよと言いました。何年も前から飼っている犬しかいないし、新しく犬を貰ってくるという話もないよ、と。

 しかし妻は確かにそう聞いたと言いますから、叔母も虫が知らせたのだろうかと従弟と話して、その場はしんみりしたのですが……後になればなるほど、なんだか怖くなってきたんですよ」

「ところで、川奈さんのうちも犬を飼っているんですか? さっきから後ろで盛んに唸ったり吠えたりしていますよね。誰か来たのかな?」

 うちでは犬など飼ってはいないし、犬の鳴き声も聞こえない。

 やはり創作なのかもしれないと私は再び疑った。

 私を怖がらせようとして、こんなことを言っているのだとしたら、ここまでの体験談もすべて作り話なのだろう。面白い話だったが、残念だこと――。

 しかし、インタビューを終えて電話を切る直前に、犬が唸った。

 そして吠えた。

 擬音語に起こすなら「ガルルル……ワン!」とでもするしかない。大型犬の声が受話器の中から響いてきた。

「秋山さん!」と私が叫ぶのと通話が途切れるのが同時で、その後はいくら掛けても彼は電話に出なかった。

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【実話怪談】100発100中の予知能力者が広島に存在、おでこに「画面が開く」女とは!? 川奈まり子の情ノ奇譚『予知』の画像4

■川奈まり子
東京都生まれ。作家。女子美術短期大学卒業後、出版社勤務、フリーライターなどを経て31歳~35歳までAV出演。2011年長編官能小説『義母の艶香』(双葉社)で小説家デビュー、2014年ホラー短編&実話怪談集『赤い地獄』(廣済堂)で怪談作家デビュー。以降、精力的に執筆活動を続け、小説、実話怪談の著書多数。近著に『迷家奇譚』(晶文社)、『実話怪談 出没地帯』(河出書房新社)、『実話奇譚 呪情』(竹書房文庫)。日本推理作家協会会員。

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東京都生まれ。作家。女子美術短期大学卒業後、出版社勤務、フリーライターなどを経て31歳~35歳までAV出演。2011年長編官能小説『義母の艶香』(双葉社)で小説家デビュー、2014年ホラー短編&実話怪談集『赤い地獄』(廣済堂)で怪談作家デビュー。以降、精力的に執筆活動を続け、小説、実話怪談の著書多数。近著に『迷家奇譚』(晶文社)、『実話怪談 出没地帯』(河出書房新社)、『実話奇譚 呪情』(竹書房文庫)。日本推理作家協会会員。
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