■山に寄り添えば生きていける
ーー写真集には狩られた野生動物の写真が結構な数収録されています。小谷村では実際に山の動物を殺して食べていたんですよね。
野村 もちろん。でも食べきれないほどは殺さないですよ。夏場に害獣駆除の檻にかかってしまうと撃たないといけないんだけれど、小谷村の人たちはそれも極力食べてあげるようにしているようでした。
ーー狩猟そのものは害獣駆除が目的なんですか?
野村 建前は害獣駆除。熊の場合は事前の調査に基づいて、獲っていい数を決めて割り当てられるんです。でも、ここ数年は里に下りてくる熊がやたらと増えてきたみたい。「今は山と里の境目がなくなっているから、冬に山に行って追うよりも、夏場に降りてくる熊が増えた。バランスが崩れてる。昔は動物と人のテリトリーが分かれていたのに」って十郎さんから聞きました。
ーー挟み込まれた冊子にも書かれていましたね。
野村 テキストは小谷の人々から聞いた話を中心に構成しています。写真集はドキュメンタリーではないけれど、彼らの言葉を載せることで、ドキュメンタリー性というかリアリティが増すんじゃないかと思ったので。
ーー人間は自然を壊している。反対に、自然が人間世界を壊すこともある、というような内容もありました。
野村 彼らは山、自然をすごく畏怖しているし大事にしています。山たち人間よりも大いなるものだってわかっているんですよ。山菜もしいたけも獣も獲り過ぎない。山を守り寄り添えば恵みが与えられて生きていけるって。今は、自然は自分たち人間がコントロールするものだ、っていう考えかたですよね。でも、コントロールなんてできるものじゃないですよ。都市だっていつ自然の力でぶち壊されるかわからないじゃないですか。小谷のような山の麓で慎ましやかに暮らしている人たちと比べると、都市の人間たちはなんと支配者的で傲慢なんだ、って感じるようになりました。