令和時代の「お笑い」はどう変わるのか? 『教養としての平成お笑い史』著者・ラリー遠田とキックの考える“未来のお笑い芸人”

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キック 今、ワードセンスの時代になっていじゃないですか。今のバラエティでひな壇のトークとかを見て笑っている人たちが、チャップリンとかキートンのような「動きの笑い」を見たときにどう思うかっていうのは興味があります。次に今の状況を壊せるのはそういう芸人なのかもしれないですね。

 動きの笑いを今もやっている人って、志村(けん)師匠とかしかいないじゃないですか。単に動けばいいわけじゃないですからね。動くことが形として面白いっていう。無音でも笑えるだけの動きって、相当な演技力がないといけないですから。霜降り明星とかもすごく動いていたけど、あれは動きの笑いっていうよりは、ツッコミの言葉を引き出すためのフリっていうところがありますよね。

ラリー そういう意味では、内村光良さんはずっと動きの笑いをやっていますよね。『LIFE!』でもそういうコントをいまだにやっている。内村さん自身もそれがやりたいんですよね。

キック 動きの笑いは本当にないですよね。なくなってきている。

ラリー 松本人志さん以降、言葉の笑いの時代になって、平成はずっとそれなんですよ。「ツッコミ芸の時代」っていうか、眼の前にいる人をどういう言葉でイジるかというセンスが試されている。有吉(弘行)さんのあだ名芸も後藤(輝基)さんの例えツッコミも全部そうですよね。たぶん、松本さんの影響で言葉の笑いが強くなりすぎているんですよね。

『エンタの神様』が流行ったのは、時代を読む力があるプロデューサーの五味一男さんが、そうじゃない笑いの方が実は大衆にウケるっていうのを分かっていたからかもしれません。

キック ユーチューバーを見て子供が笑っているじゃないですか。それを見ているとこっちは「こんなのつまんねえよ」って思うんですけど、『エンタの神様』も割とそういう感じだったと思うんですよね。「これの何が面白いの?」って言われていた。だけど、それこそが実は先駆けだったんでしょうね。

ラリー 動きとか衣装とか音楽の雰囲気で、何となく「楽しい」みたいな感覚を生み出していたんですよね。

キック 僕もユーチューバーだったんだな。

ラリー そう考えると、キックさんのネタはYouTube向きなのかもしれない。ムエタイのネタは、他人に対してツッコむみたいな形じゃないすか。ああいうユーチューバーっていますよね。せやろがいおじさんとか。キックさんは「ムエタイおじさん」ですね(笑)。

キック ムエタイおじさん、いいですね。やっぱり過激なことやんなきゃダメですよね。

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