「ブラックホールの放射線が生命を創造した」ハーバード大が新説発表! 宇宙と生命誕生の新概念「銀河ハビタブルゾーン」とは!?

■弱まった放射線が生命の誕生にポジティブに働く

 AGNから放たれる放射線の影響が及ぶ範囲内にある惑星は当然ながら住めたものではなく、生命が生息できる余地はない。この範囲は“デッドゾーン”と呼ばれ、銀河の中の荒涼たる不毛のエリアであると認識されてきたのだが、研究チームによれば、この放射線の影響が弱まるエリアまでくれば、生命が誕生する可能性が生まれてくると説明している。

 天の川銀河の中心部に位置する「射手座A*(いてざエー・スター)」は、AGNと同様の構造で中心に大質量ブラックホールがあり強力な放射線を放っている。これまでの研究で射手座A*のデッドゾーンはブラックホールから半径3200光年の範囲と考えられてきたのだが、今回の研究チームの試算によれば、真の意味でのデッドゾーンはせいぜい中心から半径100光年の範囲内に収まるということだ。

「ブラックホールの放射線が生命を創造した」ハーバード大が新説発表! 宇宙と生命誕生の新概念「銀河ハビタブルゾーン」とは!?の画像3
いて座A* 画像は「Wikipedia」より

 そしてこの真のデットゾーンから少し離れていれば惑星の大気は無傷のまま保たれるという。しかも弱まった放射線が大気中の分子を分解し、生命の誕生につながる化合物を生成するというのである。たとえば光合成を行う生命が登場すれば大気中の酸素も増えていくことにもなる。

 こうして放射線のネガティブな影響が、この銀河ハビタブルゾーンにおいては一転、生命の誕生にポジティブに働くということになる。つまり生命が存在する惑星を探す場合、まずは銀河ハビタブルゾーンを割り出し、そのエリア内の恒星系のハビタブルゾーンを特定するという2重の“絞り込み”で地球外生命発見の確率が高められるのだ。

「ブラックホールの放射線が生命を創造した」ハーバード大が新説発表! 宇宙と生命誕生の新概念「銀河ハビタブルゾーン」とは!?の画像4
画像は「Wikipedia」より

 “宇宙の墓場”であるブラックホールが実はその影で生命誕生を手助けしているのだとすれば、恐怖と絶望の象徴から予期せぬ“イメチェン”を果たすことになるのかもしれない。

参考:「Science Alert」、「Futurism」、「Live Science」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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