祖母を狂わせた『でる家』ー 本当にあった超怖い話・川奈まり子の実話怪談!

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画像は「Getty Images」より引用

 明くる日、聡さんは両親から祖母の家の留守番と掃除などを仰せつかったため、学校を休んだ。

 父と母は葬儀の手配などで日中は飛び回らねばならず、一方、朝のうちに祖母の遺体が戻ってきたので、長男である彼があてにされたのである。

 前述したように聡さんたちの家は祖母の家から至近距離にあるが、祖母が年を取って病気がちになってから、聡さんは来る機会がなくなっていた。

 久しぶりに訪れて、あらためて各部屋を見回してみると、相当に古い。

 それにまた、和洋折衷の不思議な造りだ。

 これは、戦後すぐに日本に赴任したどこかの国の外交官が建てた家なのだ。

 その外交官は、家族と一緒にここに何十年か住んだ後、この家を不動産屋に預けて引っ越した。それを沖縄から上京してきた祖父母が買い取った次第だ。

 そして父や叔父叔母を生み育てたわけだから、家に年季が入るし、町内の知り合いも大変多くなっている。

 しばらくは、忌中札を見て訪ねてきた近所の人たちの相手をするのに、聡さんは忙しかった。母から来客用の菓子を買ってくるように頼まれてもいたが、買い物に行く機会は、どうやらなさそうだった。

 客が途切れると、各部屋の掃除をした。2階建てで、7室か8室はあったから、これも大仕事だ。聡さんは真面目にやった。

 ――仏間には、祖母の遺体が寝かせてあった。

 そこだけは母が出掛ける前にしっかり綺麗にしていったので、手をつける必要がなかった。

 午後になってしばらくすると、弟がランドセルを背負ったままやってきた。

「うちに帰ったら、玄関に鍵が掛かってた。お母さんたちは?」

「葬儀社とか役場とか、お父さんとあちこち飛び回ってる。いや、ちょうどいいところに来てくれた! お母さんからお客さんに出すお菓子を買っておいてくれって頼まれてたんだけど、人がちょぼちょぼ訪ねてくるし、掃除は全然終わらないしで、困ってたんだ。おまえ、15分ぐらい留守番を代わってくれ」

 弟が「わかった」と返事をしたので、聡さんは近所のコンビニエンスストアへ行った。

 急いで買い物をして戻ってくると、てっきり居間でテレビでも見ているだろうと思った弟の姿が居間には見当たらなかった。

 探してみると、隣の仏間におり、なんとしたことか、祖母の遺体を覆っている蒲団をめくりあげていた。

「おい! 何やってんだ! まったく不謹慎な奴だな!」

 聡さんは語気荒く叱りつつ大股でドカドカとそちらに近づいた。

 いつもの弟なら拳固を恐れて逃げ出すところだ。

 だが、このときは不思議そうに目を見張って、まっすぐに聡さんを振り仰ぐと、祖母の蒲団を指差した。

「そこに子どもがいた! きっと、僕たちが知らない親戚の子だよ! おばあちゃんの布団に潜っていたんだ! まだどっかにいるかも!」

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