祖母を狂わせた『でる家』ー 本当にあった超怖い話・川奈まり子の実話怪談!
聞けば、弟は、居間にいたら隣の部屋から人の気配がしたので、聡さんが帰ってきたのだと思い、いったん廊下に出てその部屋の戸を開けたのだという。
すると、そこは仏間だった。
聡さんの弟も祖母の生前にここを訪ねたことがあったが、彼が物心つく頃から徐々に祖母の病態が悪化していったので、聡さんのように家の間取りを熟知するには至っていなかった。また、子どもであることから、仏間を整えて祖母の遺体を安置するときには、邪魔にならないように遠ざけられていた。
だから一瞬ハッとした。
そこには線香の香りが垂れ込めており、顔に白い布を被せた祖母の遺体が安置されていて、しかもいると思っていた兄の姿がなかったからだ。
だから、すっかり怖気づいてしまったのだという。
が、慌てて立ち去ろうとしたそのとき、祖母の蒲団の端がめくれて、隙間から幼い男の子が顔を出してこちらを向いたのだそうだ。
「誰?」
反射的に訊ねながら、彼は、たぶん親戚の子だろうと考えた。
お通夜とお葬式のために親に連れてこられたのだ、と。
「何してんの? そんなところに入っちゃダメだよ! 出ておいで! もうすぐお兄ちゃんがお菓子を買ってくるから、居間の方で待っていようよ」
小学6年生である彼よりも、その男の子はずっと幼い顔立ちをしていたのである。
蒲団の端に容易に潜り込めるぐらいだから、体も小さい。3、4歳ぐらいだろうか。そもそも、そんな常識外れの振舞いを見せるところが幼さを表している。
だから優しく話しかけながら近づいたのだが……。
「僕のことをじいっと見つめてるだけで、その子はウンともスンとも言わなかった。だもんで、仕方ないから引っ張り出そうと思ったら、スッと蒲団の中に引っ込んじゃった! だからめくって探そうとしたところへ、お兄ちゃんが帰ってきたんだよ! 僕、悪くないよ! それにしても、どこ行ったんだろ?」
念のため、聡さんも蒲団を上から触って確かめたが、死んでいる祖母の体以外、掛布団の下には何も入っていなさそうだった。
仏間には仏壇の他は家具を置いていないので、他には隠れるところがない。
居間と仏間を仕切る引き戸は閉め切ったまま、戸の前に家具が置かれて壁と化しており、事実上、仏間の出入口は廊下側の1ヶ所だけである。
そこから逃げ出してきたら、帰ってきた聡さんが気がつかないはずがない。なぜなら、仏間と居間に通ずる戸がある廊下は、玄関の真正面から真っ直ぐに伸びているので、部屋から人が出入りしたら必ず目に入るわけだから。
……まさか、煙のように消えたのか?
そんな怪しい男の子といえば、あれしかいないではないか、と、聡さんは思った。
「男の子って、おばあちゃんが病院で話してた男の子じゃないか?」
そう言うと、弟は飛びあがって慄いた。
「えっ! 怖くなるからやめて! ……でも、そう言われてみたら、そうだ……。だって、蒲団から顔を出したとき、なんだか裸んぼみたいに見えたんだ。肩先の肌も見えたからね。おばあちゃんも、あの子は服を着てないって言ってたよね? それに……今思うと、すごく青白くて……人間じゃないみたいな……」
(つづく)
<後編はこちら明日・配信>
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2024.10.02 20:00心霊祖母を狂わせた『でる家』ー 本当にあった超怖い話・川奈まり子の実話怪談!のページです。怪談、老人、子供、怖い話、家、川奈まり子、情ノ奇譚などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで