「出産は悪、妊活は無駄」反出生主義がガチ台頭! 人類は絶滅すべき…ベネター理論が新常識に!?

 環境活動家らの中には、気候変と将来への不安を理由に子ども生まない選択をする者もいるが、反出生主義の流行はこうした時代感覚ともリンクしているのかもしれない。ただ、ベネターが主張する反出生主義と環境活動家らの主張は根本的に異なるものだ。

 環境活動家らは、環境問題が全て解決し、持続可能な世界が実現されれば、いくらでも子どもを産むと思われるが、反出生主義はどんな世界であっても“絶滅”することが倫理的な選択だとする。

 出産を否定する反出生主義の最終ゴールは“絶滅”である。そして、人間だけでなく、快苦を感じる能力がある生命全てが“段階的に”絶滅すべきだとする。即座の絶滅ではなく、段階的な絶滅という点がポイントだ。決して世界中に核の雨を降らせて無理心中しようと提案しているわけではない。子どもを産むことを止めて、いま残っている“生まれてしまった生命”が自然に死んでいけば、自ずと絶滅は完了する。

「出産は悪、妊活は無駄」反出生主義がガチ台頭! 人類は絶滅すべき…ベネター理論が新常識に!?の画像3
画像は「getty images」より

 ところで、反出生主義の根本動機は「苦の総量を減らす」という功利主義だが、もし人類が他の生物に先駆けて絶滅してしまったら、苦の総量は増えてしまうかもしれない。なぜなら、苦痛を感じる能力がある動物たちが今以上に繁栄する恐れがあるからだ。

オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーは、動物実験における“種差別”を暴く過程で、生後6カ月の赤ん坊と、ネズミ、猿、モルモット、犬、豚、ウサギは、知性の程度と苦痛を感じる能力という点で違いがないとした。苦痛を感じる動物が増えてしまうことは、人間が増えることと変わらないのだ。

 すると、反出生主義者はそうした生物の絶滅を手助けした後でないと、絶滅することができない。これはかなり困難な道のりだ。もちろん、ベネターは段階的な絶滅を可能なものとして提示しているわけではなく、反出生主義の論理的帰結として提示しているに過ぎないのだが。

とはいえ、反出生主義は、常識的に良いこととされる出産や人類の繁栄、持続可能な社会といったものの妥当性を問い直す1つのきっかけになるだろう。そして、その点においてベネターの議論は出色の出来だ。子どもを産んでしまった人もまだ産んでいない人も、子ども産みたい人も、産みたくない人も、一度『生まれてこないほうが良かった:存在してしまうことの害悪)』(すずさわ書店)を手に取ってみては如何だろうか?

参考:「The Guardian」、ほか

TOCANA編集部

TOCANA/トカナ|UFO、UMA、心霊、予言など好奇心を刺激するオカルトニュースメディア
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

現実と夢が交差するレストラン…叔父が最期に託したメッセージと不思議な夢

現実と夢が交差するレストラン…叔父が最期に託したメッセージと不思議な夢

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.11.14 23:00心霊
彼女は“それ”を叱ってしまった… 黒髪が招く悲劇『呪われた卒業式の予行演習』

彼女は“それ”を叱ってしまった… 黒髪が招く悲劇『呪われた卒業式の予行演習』

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.30 23:00心霊
深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

深夜の国道に立つ異様な『白い花嫁』タクシー運転手が語る“最恐”怪談

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.16 20:00心霊
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

「出産は悪、妊活は無駄」反出生主義がガチ台頭! 人類は絶滅すべき…ベネター理論が新常識に!?のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

人気記事ランキング17:35更新