ガンや肥満は「感染」するか…論文内容が超話題に! 非伝染性の病気が伝染するかを探る「マイクロバイオーム研究」とは!?

 ワクチンや抗生物質の発明によって、感染性病原体が引き起こす病気の脅威は小さくなった。かつては感染症で多くの人々が亡くなっていたが、今ではガンや心疾患、呼吸器疾患といった非感染性の疾患が全世界の死者の死因のうち70%を占めるという。非感染性疾患の原因は遺伝や環境、生活様式など様々な要因が絡み合ったものとされるが、近年、一部の科学者が「非感染性疾患も伝染する可能性がある」という仮説を提唱し、大きな話題となっている。これは一体どういうことなのか? 科学ニュースメディア「Live Science」(1月18日付)が報じた。

Can You ‘Catch’ Cancer or Obesity from Other People? (Live Science)

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画像は「Live Science」より引用

 感染性のないはずの疾患が伝染する——この仮説で重要な役割を果たすのは、人体に住み着いている微生物の集合体(マイクロバイオーム)である。マイクロバイオームは人によって異なっており、代謝、消化、免疫など、健康に大きく影響していると考えられており、一部の病気との関連も指摘されている。このマイクロバイオームが肥満や糖尿病、ガン、心血管疾患といった非感染性の疾患を伝染させているというのだ。

 今月17日、有名科学誌サイエンスにこの仮説に関する論文が掲載された。それによると、糖尿病や炎症性腸疾患、心血管疾患といった患者では、健康な人と比べて腸内細菌叢に違いが見られるという。動物実験で糖尿病のマウスの糞便を健康なマウスに移植したところ、糖尿病をしたという結果も出ている。興味深いことに、人間でも2型糖尿病と診断された人の配偶者がそれから1年以内に同じ病気と診断されるケースがあるという。このような傾向は炎症性腸疾患でも見られるという。

 フィジーで約290人を対象に行われた研究によれば、口内と内臓の微生物叢は母親と子供でよく似たパターンを示したというが、それよりも配偶者間の方がさらに類似していたという。マイクロバイオームは離れた場所で暮らしている近親者よりも一緒に暮らしている人々と似ていることがわかっており、日常生活の中でお互いの微生物を交換し合っていることが示唆されている。2型糖尿病や炎症性腸疾患といった非感染性疾患がマイクロバイオームを介して「感染」した可能性は否定できない。

 しかし、この可能性を研究するのは非常に難しいという。マイクロバイオームは食習慣や日常習慣によって変化するし、2型糖尿病や炎症性腸疾患といった疾病の原因には運動習慣や食生活などの環境要因や遺伝要因も大きく影響している。環境や遺伝の影響とマイクロバイオームによる影響をどうやって見分ければよいのか。

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