【3.11から9年】なぜ日本人は「自分だけは死なない」と思ってしまうのか!? アナタの命を奪う「認知バイアス」の恐怖を解説

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画像は「Getty Images」より引用

■東日本大震災の津波

 では、9年前の東日本大震災の際に人々が取った行動が、これまで紹介したバイアスに当てはまる例を見ていきたい。

『津波からの生還 東日本大震災・石巻地方100人の証言』 (旬報社)という、3.11の津波から生還した石巻地方の100人の証言集から、危機一髪で命が助かったケースをいくつか紹介する。

 まず、石巻市の当時41歳の男性は、激しい地震の揺れに襲われて家族の安否を確かめるために車に乗った。途中の川の水位を見て、津波は川の水が引いてから来ると聞いていたので、まだ大丈夫と判断した。帰宅し、津波が来ても50cmか1m程度だろうと思ったところで大津波に襲われ、700mほど流されたが、危うく命は助かった。

 このケースでは、津波は川の水が引いてから襲ってくるという不正確な情報に頼っていたが、実際は津波の前には必ず潮が引くとは限らない。また、津波の高さがせいぜい50cmか1mだろうと思い込み、しかも高さ50cm程度でも車が流される場合もあることを知らなかった。この場合、正確な知識が欠けていたことも問題だが、さらに「正常性バイアス」または事態を実際よりも軽く見るという「楽観バイアス」が働いたのだろうか。

 30代の家事手伝いの女性は、自宅で突然襲ってきた地震に驚いたが、1933年の昭和三陸地震(M8.1)の大津波でも、家が少し高い場所にあるために津波はここまで来なかったと祖母から聞いていたため、避難せずにとどまった。その後に弟が帰宅して、促されて車に乗り込んだ時に津波に襲われた。夢中でドアを開け、流されながら浮いていた民家の屋根につかまって命を取り留めたが、この女性の場合、祖母から聞いていた津波体験が「正常性バイアス」または「楽観バイアス」として働いたのだろう。

 飲食店経営の60代の男性は、地震の大きさと長さに驚いて店の外に出たが、道路上には数十名の人々がいて誰も避難していなかった。ラジオで「3メートルの津波」という情報が流れたが、ここは海岸から800mもあるから津波が来ることは無いと判断。間もなく背丈を超える津波に襲われ、流されたものの浮かんでいたトタン板に乗って九死に一生を得た。

 この男性の場合は、他の人たちが避難しないから自分も、という「同調バイアス」があった。さらに、3mの津波ならばここまで来ることはないと思ったのは、事実を軽く見ようとする「楽観バイアス」の働きだろうか。

 5年前の記事でも紹介したが、3.11の津波から人々が生還した「釜石の奇跡」は、よく知られている。岩手県釜石市の釜石東中学校では、地震の発生直後に生徒たちが高台をめがけて避難した。その様子を見て、近所の小学校や地域住民もそれに従い、直後に襲ってきた津波から助かった。これは、周囲の人々の行動を見て自分も従うという「同調バイアス」が良い方向に働いた例といえるだろう。

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