【3.11から9年】なぜ日本人は「自分だけは死なない」と思ってしまうのか!? アナタの命を奪う「認知バイアス」の恐怖を解説

■なぜ走って逃げないのか?

 防災アドバイザー・山村武彦氏の著書『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている』(宝島社)では、東日本大震災で見られた様々なバイアスの例を紹介している。

 ある例では、津波が襲ってきて避難を始めても、一人だけゆっくり歩く男性がいて、津波に呑まれてしまった。山村氏は東日本大震災の発生直後に現地で聞き取り調査をしたが、同様に津波が近づいているのに走らずゆっくり歩く人々が多かったことを知った。それでも運よく助かった人々に、なぜあの時に走らなかったのかと聞くと、異口同音の答えが返ってきた。自分は走っているつもりだったが、足がすくんでゆっくりとしか走れなかったのだと。

 筆者はYouTubeで3.11の津波の動画を見て、ゆっくり歩くように避難する人々を見て「なぜもっと早く走らないんだ?」と疑問に思っていたが、そういう人も多かったことを知り、筆者は目から鱗の心境になった。

 英国の心理学者ジョン・リーチ博士の研究によると、災害に遭遇した際に人が取る行動パターンは以下の3種類があるという。

1. 落ち着いて行動できる人 → 約10%
2. 我を失って泣き叫ぶ人 → 約10~15%
3. ショック状態になり呆然として何もできない人 → 約75~80%

 このうち、3のような状態になることを「凍りつき症候群」と呼ぶが、これもバイアスの一つだ。例えば2011年9月11日の米国同時多発テロの際も、世界貿易センターの上層階で、そのような状態に陥って動きが取れなくなった人々がいたという。

 では、凍りつき状態にある人を見たら、どうすれば良いのか。『消防防災博物館』サイトの解説によると、周囲の凍りつきを免れた人々が声をかけ、体をゆするなどして凍りつきから覚めることを促し、場合によっては無理やりでも安全な場所に避難させる必要があるという。このような凍りつき状態になる人々が統計的に4人中3人もいるならば、それも当然だろう。

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