公園でホームレス体験、西成で泥酔、山谷で包丁出され、精神病院に入院、オウムに潜入…絶版&発禁の男・村田らむ全著作振り返り!

【村田らむ・新刊『ホームレス消滅』発売記念イベント開催!2020年6月11日(木)@新宿ネイキッドロフト ゲスト・トカナ角由紀子】

ホームレス消滅 (幻冬舎新書)


 というわけでいきなり宣伝で悪いのだが、2020年5月28日に、幻冬舎から『ホームレス消滅』という新著を発刊させていただいた。

 内容は、国が進める「ホームレス0計画」と、「誰の世話にもなりたくない!! ホームレス生活を続けたい!!」と言うホームレスたちの話を主軸に、僕が20年以上に渡ってホームレスを取材してきた生の声と、客観的なデータを盛り込んだ一冊になっている。

 初の新書なのだが290ページとかなりのボリュームになっている。お値段税抜900円と大変お買い得になっているので、興味のあるかたは是非購入していただきたい。

『ホームレス消滅』が何冊目の著作なのか、自分でもよく分からなくなっていたので調べてみたら、実に20冊目だった。

 今回は今までに出版してきた、全著作を振り返ってみることにする。

(※ ゴーストライターとして制作に携わった作品など何冊かは紹介していない。また紙、電子、どちらの同人誌も紹介していない)



■村田らむ、ライター人生の始まり

 僕は22歳で福岡の大学を卒業した後、上京してイラストレーターを目指した。アルバイトをしつつ23〜4歳くらいで初めて紙面に載り(ちなみに初掲載はリクルートのアルバイト情報誌『フロムエー』)、そこからしばらくはイラストレーターを生業にしていた。

 なぜイラストレーターになったかと言うと、大学でデザインを専攻していたため、イラストレーターになるのが正しいような気がしていたのだ。なんとか食えるようにはなって良かったが、実はライターもしたいという気持ちも強くあった。

 そこで当時イラストを描かせてもらっていたデータハウス社の編集さんにお願いして、記事を書かせてもらったのだ。

 青木ヶ原樹海横断、ホームレスインタビュー、などの記事を書いた。

 とにかくコネも専門知識もなんにもない26歳の僕にとっては、『行けばそこにある』がとても大事だったのだ。

 青木ヶ原樹海も、ホームレスも、行けばそこにあったので、とにかく上野公園に通いまくって、試行錯誤しながら記事にした。

 そして、ホームレスの記事を読んだデータハウスの社長さんから、ホームレスで単行本を作らないか? と言われたのだった。

こじき大百科—にっぽん全国ホームレス大調査 (2001年/データハウス)

 もちろん、OKしてバリバリ取材をした。

 上野公園でホームレス体験をし、西成で酔っぱらい、山谷で包丁を出され、空き缶を一晩中集めたりと、20代の村田らむ君はがんばった。

 ちなみに、共著の黒柳わん氏は大学時代の後輩だった。本が出来上がったタイミングで仲違いしたので、それ以来会っていない。

 本は基本的に一人で作るべきだな、と思う。

 そして、一年近くかかってやっと本が発売された。池袋の本屋さんに、ドーン!! と並んでいたのを今でも覚えている。

 売上は良く、すぐに重版がかかった。初版の部数もまずまず多かったのに、すぐに重版なんて、これは印税生活も夢じゃない!! ……と思った翌日、編集部から電話があった。

「こじき大百科ですけど、絶版されることが決まりました」

 ガーン、である。青天の霹靂だ。

 某団体から差別的だと強烈なクレームがあったそうだ。社長が追いかけ回されたとかも聞いた。僕が話し合いに加わった時はすでに決着はついていて、社長に「素直に謝るように」と言われて仕方なく謝った。今思えば、謝らなきゃよかったなと思うし、この次に揉めた時は謝らなかった。

 ちなみに『こじき』という部分がダメだよ、と僕を責める人がいるが、そこを決めたのは僕じゃない。社長が『乞食』というタイトルで出したいと言ったのだ。僕はさすがに『乞食』はストレートすぎるだろうと思って、『大百科』をつけて緩めようという案を出したくらいなのだ。

 大手新聞社にも僕が完全に悪いように記事を書かれた。どこの新聞かは書かないけど、当時は“毎日”恨んだもんである。

 がんばって出版した一冊目が絶版&自主回収である。やっと膝をガクガクしながら立ち上がって、歩きはじめた、はじめの一歩で、地雷を踏んで身体が粉々に砕けたようなもんである。

 再起不能、もうこれで単行本を作るチャンスは巡ってこないだろうな〜と思った。

 しかしなんだか悪目立ちしたのか、サブカル雑誌で記事を書かせてもらえるようになった。記事には自分のイラストを付けられることも多く、ある程度まとまった額を稼ぐことができるようになった。

 夢の印税生活は叶わなかったが、でもライターになることはできたのだった。

 でも、今でもやっぱり『こじき大百科—にっぽん全国ホームレス大調査』は絶版されるほど悪い本じゃなかったと思う。いつか読んでもらえる形で出したい。

 今でもアマゾンなどで買うことができるが、プレミアがついている。昔は2万円ほどしたこともあったが、今は4〜5000円が相場だ。

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