【追悼】“ノストラダムスの大予言”五島勉は「絶対に人類滅亡する」とは言ってなかった!愛読者が語る「五島氏の本当の凄さ」


■ノストラダムスシリーズに書かれていた本当のこと


 この時期、人々の不安につけ込むようにオカルトが大流行した。ユリ・ゲラーのスプーン曲げ、矢追純一のUFO番組、コックリさん、心霊写真、口裂け女の伝説など、数々の怪しい話が少年少女たちを魅了した。その極めつけがノストラダムスの大予言だった。

 1979年生まれの私は、残念ながらその直撃世代ではない。でも、ノストラダムス関連の五島氏の著作には個人的に強い影響を受けた。自分の世代では割と少数派だったかもしれない。

 そのきっかけは何気ないことだった。あれは小学校高学年の頃。子供向けの雑誌などで何となくノストラダムスのことは知っていた。そして、図書館でたまたま五島氏の本を見つけたのだ。それはシリーズ5作目にあたる『ノストラダムスの大予言5』だった。

 いざ読み始めると、その内容に引き込まれた。その後も図書館で見かけるたびにシリーズの別の巻を読むようになり、シリーズ8作目の『ノストラダムスの大予言 残された希望編』ぐらいまではチェックしていた。

 いざ本の内容を読んでみると、世間で言われている話とは少し違うな、とも感じた。確かに予言で暗示された悲観的な未来予想図が描かれてはいるのだが、そこには絶望と同時に希望も語られていた。「ひょっとしたらこういうふうにすれば大丈夫かもしれない」「こう考えれば滅亡は免れるかもしれない」といった内容も含まれていて、「絶対に人類が滅びる」などとは断言していなかったのだ。

 五島氏は、その後のインタビューなどでもそういう趣旨のことを語っている。それは、彼の本の内容をきちんと読んだ人にとっては自明のことだった。だが、彼の意図はほとんど正しく理解されていなかった。

 なぜなら、予言を真に受けて人類滅亡に脅えていた人の大半は、本を買ってもいないし、中身をきちんと読んでもいなかったからだ。単に「1999年に人類が滅亡する」というセンセーショナルな部分だけを見て、勝手にパニックに陥っていただけだ。ネットニュースの見出しだけを見て本文を読まずにSNSであれこれ自分の感想を述べる人間が星の数ほどいる今の状況と全く同じである。

 いま思えば、小学生だった私は、我ながら五島氏の「いい読者」だったと思う。予言のことはそれなりに信じていたし、彼の文章を純粋に楽しんでいた。しかし、人類滅亡を頭ごなしに信じていたわけではなく、「書かれている通りに救いの可能性もあるのだろうな」というふうに妙に冷静に理解もしていた。

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