酒呑童子と血の酒や人肉の饗応…日本の知られざる鬼伝説とは? ドラマ「妖怪シェアハウス」を民俗学者の畑中章宏が解説

 鬼退治の舞台となった大江山には、このほかにも2つの鬼伝説が残されている。崇神天皇の弟にあたる日子坐王(ひこいますのきみ)の土蜘蛛退治伝説と、用明天皇の第三皇子麻呂子親王の鬼退治伝説だ。

大江山。画像は「Wikipedia」より引用

 こうした伝説を町おこしに活かすため、1993年(平成5)4月に廃坑となった銅山の跡地に「日本の鬼の交流博物館」が開館。日本国内にとどまらず、世界中の伝統芸能で用いられる鬼面や人形、屏風画などを展示し、鬼の多面性について紹介している。

 京都府宮津市の宮津駅から同府福知山市の福知山駅に至る京都丹後鉄道宮福線の大江駅から車で約15分という、決して便利とは言えないところにあるけれど、毎熊克哉演じる酒呑童子に惚れた人は訪ねてみてはどうだろう。

 酒呑童子に話を戻すと、自分の行状はともかく、頼光らの仕打ちに怒ったように人をだますことを忌み嫌う。ドラマの酒呑童子もやはり“正義感”が強い鬼として描かれているのだ。

 ところで源頼光四天王のひとりである坂田公時は、「金時」とも書き、まさかり担いだ「金太郎」が成長した姿である。あの野生児そのもののような金太郎さんが大人になり、鬼をだまし討ちしたなんて、子どもの将来はわからないものである。

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文=畑中章宏

1962年、大阪生まれ。民俗学者・作家。
著書に『災害と妖怪』(亜紀書房)『天災と日本人』(ちくま新書)『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)『死者の民主主義』(トランスビュー)など。民俗学をベースに災害や妖怪、民主主義など現代の問題を論じる気鋭の民俗学者。最新刊『関西弁で読む遠野物語』が発売中。

ツイッター:@akirevolution

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