怖すぎる「醜女」伝説がヤバイ! 食べ物に対するどん欲さ、追走のしつこさ…ドラマ「妖怪シェアハウス」の黄泉醜女を民俗学者が深堀り!


『和名類聚抄』という古い辞書には「醜女はある説に黄泉の鬼なりという」とあり、『万葉集』でもシコに「鬼」の字があてられている。つまりシコメは「鬼」の一種だと考えられていたようだ。

 ただし「シコ」には「醜い」以外に、「畏怖」や「頑強」、「異質」などの意味もあったという説がある。「醜」の字にシコの読みをあてた例に、オオクニヌシ(大国主)の別名「葦原醜男(シコオ)」がある。この場合の「シコ」は、「畏怖すべきもの」を意味し、「カシコシ(畏、恐)」の「シコ」ともつながりがあるといわれる。

 またシコを、荒々しさや逞しさ、強靱や頑強を褒めたたえる表現だという説もある。シコメがイザナギを追いかけたときにみせた、食べ物に対するどん欲さ、追走のしつこさといった行動力を指すという説だ。いずれにしても、シコメはたんなる“醜い女”ではなく、カシコくてアクティブな女性なのである。

 醜女にゆかりの坂道、黄泉比良坂は“観光名所”として実在する。

 島根県松江市、JR山陰本線の揖屋駅から歩いて20分ほど、国道から緩やかな坂を上がったところがその伝承地だ。木立の中に大きな岩が立ち並んでいて、この岩はシコメらを振り切ったイザナギが黄泉の国への入り口をふさいだ「千引の岩(ちびきのいわ)」なのだそうである。十年ほど前に訪れたとき、個人的には「こんなところが……」という感想を抱いたけれど、神秘的な雰囲気やシコメの気配を感じる人がいるかもしれない。

黄泉比良坂。画像は「Wikipedia」より引用

文=畑中章宏

1962年、大阪生まれ。民俗学者・作家。
著書に『災害と妖怪』(亜紀書房)『天災と日本人』(ちくま新書)『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)『死者の民主主義』(トランスビュー)など。民俗学をベースに災害や妖怪、民主主義など現代の問題を論じる気鋭の民俗学者。最新刊『関西弁で読む遠野物語』が発売中。

ツイッター:@akirevolution

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