半沢直樹で読み解く「フィンセン文書」がヤバイ! ロスチャイルド、チャイナマネー、米大統領選と本当の黒幕…徹底解説!


●一体何を告発しようとしていたのか

 では、彼ないしは彼女は何を告発しようとしていたのだろうか。ここが今回の事件のポイントで、可能性は2つある。ただその話に入る前に、フィンセン文書の告発対象を眺めてみよう。

 米ニュースサイト「バズフィード」によれば、疑わしい取引の金額が多いのはグローバル大手5行である。それ以外にも邦銀含め多数の金融機関の名前が出ているが、それらの関与は末端レベルでしかない。

 取引額が突出して多いのがドイツ銀行(1兆3000億ドル)、次いでアメリカの2行、JPモルガン・チェース(5140億ドル)とバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(640億ドル)、そしてイギリスの2行、スタンダードチャータード銀行(1660億ドル)とHSBC(440億ドル)である。

 またその取引相手はロシア財閥、アラブへの武器供与、アメリカの巨大詐欺組織、中国を経由した北朝鮮への送金とバラエティに富んでいる。

画像は「Getty Images」より引用


 金額だけ見るとドイツ銀行とJPモルガン・チェースで告発額の大半を占めるが、実はこの2行のマネーロンダリングはすでに表面化して巨額の罰金を支払っている。さらにドイツ銀行は収益源とみられた投資銀行部門から撤退することで事件の幕引きを図っている。このあたりの経緯については過去の記事に詳しい

 今回の告発のターゲットとして考えられる可能性の1つは、過去に報じたように、ドイツ銀行の事件が中途半端に幕引きになったことに対する巻き返しである。

 結局、ドイツ銀行のロシア財閥との一連のマネーロンダリングの中身は解明されないまま終結を迎えた。一連の疑惑の中で、ドイツ銀行はドナルド・トランプ米大統領関連の財務情報を提出せよという命令が裁判所から出ていたのだが、財務省当局は追及しきれなかった様子だ。

 ロシアないしはウクライナ問題に関しては、対立するバイデン候補も何らかの疑惑への関与が報道されている。いずれにしても、11月の大統領選挙の前にICIJがフィンセン文書の公開に踏み切った流れを考えると、今回の告発の狙いがアメリカの大統領選挙がらみにある可能性もあるのだ。

 ただ、それだけでは腑に落ちない点もある。今回の事件はグローバルな銀行がアメリカ財務省当局に提出した、本来厳重に管理されるべき公的文書の大量流出である。FBIが捜査を行えば、流出に関与した職員は特定され、起訴されれば終身刑はまぬかれない。それだけのリスクを抱えながら、一職員が義憤だけでリークに手を染めるとは考えにくい。つまりフィンセン文書の流出はもっと上層部、政権幹部の指示と組織的な関与がその背景に感じられるのだ。

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