理解できなければ表現できない「明瞭性のパラドックス」とは!? 哲学者を悩ませる超重要命題、“落とし穴”からの抜け出し方を解説!

 明瞭性のパラドックスを解決するためには、理解と表現を同時に行うしかない。言語は思考を表現するための媒体としてだけでなく、思考を発達させるための手段としても機能しているのである。つまり理解しながら説明をするわけだが、そこにはさまざまな“落とし穴”があるという。

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「Aeon」の記事より

■思考と感情をクリアに表現するのを邪魔する“落とし穴”

 形のないものを詳細に説明するのはまず第一に言葉を使うしかないのだが、本来我々の思考は言葉を使って一本道を進んでいるわけではない。そして言語は、独自の特性パラメーターと制限を備えた、思考の1つのモードに過ぎないことをよく理解する必要がある。言葉によって物事を客観的に眺めることができるものの、物事を認識するための不完全な道具に過ぎないのだ。

 言語の持つ限界性に加え、思い込みや紋切り型表現の妨害にも意識的であるべきだ。

 たとえばある俳優の顔ははっきりと思い浮かぶものの、名前が思い出せないという場合、勝手に脳が「山」ではじまる名前かもしれないと候補を挙げてくる場合がある。それが合っている場合もあれば間違っている場合もあり、もし間違っていた場合「山」に固執するのはまったく無駄な時間であることになる。

 感情表現にも気をつけなければならない。

 赤面や発汗、震えなど神経反射的に起こる感情とは異なり、感情表現については実は意図的に行われていることが多いという。我々は喜びたいから喜び、泣きたい時に泣いているのである。これは生理的反応とは別物である。

 哲学者のロザリンド・ハーストハウス氏は、感情表現についての説明の中で、感情を表現する多くの行動は理由の観点からはまったく説明できないと主張している。怒りに任せて花瓶を床に叩きつける行為があるかもしれないが、ほとんどの者は怒りの感情が湧き起こったからといって花瓶を割ったりはしない。怒りに任せて花瓶を割る者は割りたいから割っているのだ。

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