「もしミツバチがいなくなったら人類は4年で絶滅する」ミツバチ大量失踪の謎を考察

画像は「Getty Images」より引用

 世界各地でミツバチが大量失踪する現象が問題になっている。なぜかミツバチが群れ全体でいなくなってしまうのだ。

 この現象は蜂蜜を生産する養蜂家だけの問題ではなく、人類全体の問題でもある。それはアインシュタインが予言したことでもあるのだが、「もしミツバチがいなくなったら人類は4年で絶滅する」と言われている。農作物の受粉が行われなくなってしまうからである。

 ミツバチの失踪については、地磁気の異常説や、ウィルス変異説、遺伝子組み換え作物の影響説などいくつかの有力な説が唱えられている。中でも有力視されているのが化学物質説だ。ネオニコチノイドと呼ばれる農薬がその原因で、この農薬にさらされたミツバチは神経をやられ大量死するという。

 ただミツバチの失踪は、ネオニコチノイドが禁止された後の欧州でも起きているし、逆に最近になってネオニコチノイド農薬が認可された日本では、認可前から大量失踪が起きている。そのため農薬は大量死の原因ではあるが、失踪のすべてを説明する要因ではないとする研究者も多い。

 そのミツバチの大量失踪について、有力な新説が登場した。偽蜂蜜説である。

 蜂蜜の流通業界では長年、偽物の混じった蜂蜜が業界を悩ませてきた。蜂蜜にグルコース溶液やコーンスターチ、水あめを混ぜることで分量を水増しするのだ。市販の安い蜂蜜はたいがいこのような混ぜ物が施されている。

 その対策で成分分析やDNA分析の技術が進み、現在では混ぜ物をした蜂蜜を分析装置を通すことで見分けることができるようになってきた。問題はそのことで、偽蜂蜜の製造業者が新たな偽蜂蜜の製造方法を開発した点にある。

 ミツバチは花の花蜜を吸って、体内の酵素で分解して蜂蜜を生産する。一度に取れる花蜜はごくわずかで、ミツバチが一生の間に集められる蜂蜜の量はスプーン一杯程度であることが知られている。

 ところが、花密ではなくショ糖やブドウ糖と果糖の混合糖をミツバチに吸わせても、体内の酵素で分解することで同様に蜂蜜が生産される。その違いは、花粉などの不純物が混じることで生まれるフレーバーの違いでしかない。成分分析的にはショ糖を吸ったミツバチが作った蜂蜜は本物の蜂蜜と見分けがつかないのだ。

 そこで最新の偽造団は、採取したアカシアやクローバーなどの花粉を混ぜた混合糖液を準備して、それをミツバチに吸わせて、本物と同じ蜂蜜を低コストで大量に作る方法を編み出した。

 働きバチが一日中、花畑を飛び回ってわずかな花蜜を集めるのではなく、巣の近くに置かれた甘い汁を吸ってはすぐに巣箱に戻り、蜂蜜にして吐き出す。この方式にしたことで、ミツバチの仕事は楽になり、かつ大量の蜂蜜が製造できるようになったのだ。

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