DNAの螺旋を“切らずに治す”最強の遺伝子編集法が爆誕! 「予想よりはるかに良い」研究者ら歓喜、難病治療にCRISPR超えの光明!

■早老症の治療法開発に光明

 遺伝子疾患の中でも特に深刻な症状の1つであるのが早老症(progeria)だ。

 早老症は、早期老化につながるきわめてまれな病気で、患者の平均寿命は14歳と短く、死因は心臓病など通常は高齢者が患う症状で亡くなる痛ましい遺伝子疾患だ。

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早老症の21歳(左)と13歳(右) 「USA Today」の記事より

 ブラウン大学アルパートメディカルスクールの小児科研究者であり、新しい論文の共著者であるレスリー・ゴードン氏は、息子のサム・バーンズが1998年に2歳で早老症と診断されて以来、この症状の治療法の開発に取り組んでいる。残念ながらサムは2014年に17歳で亡くなった。

 現在、アメリカでは19人、世界中で約400人が早老症を患っており、これは「ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(Hutchinson-Gilford Progeria Syndrome)」とも呼ばれている。

 2020年11月、FDA(米食品医薬品局)は、この病気の最初の治療薬である「Zokinvy(lonafarnib)」を、通常はがんの治療に使用されるクラスの薬剤から承認した。13年間の研究によると、この薬は早老症の子どもにさらに2~5年の寿命をもたらすことができることが確かめられているが、治療と呼ぶにはまだほど遠いのも事実だ。

「これ(一塩基編集技術)は、私たちが本当にこれらの子どもたちを助けることができるという一種の標識です」と、プロジェリア研究財団を共同設立し、現在はボランティアの医療ディレクターを務める前出のゴードン氏は語る。

 画期的な成果がもたらされた今回の研究だが、今後も安全性の研究やサルを使った治験など、実際にこの病気の子どもたちに適用するにはさらに数年の研究が必要である。

「やるべきことはまだたくさんあります。これは動物モデルにおけるこれらの病気の特徴に対する最初の大きくて美しい成果物です。それはきわめて重要なものです」(レスリー・ゴードン氏)

 早老症をはじめとする遺伝子治療において大きな希望の光となっている一塩基編集技術の研究の進展に期待したい。

参考:「USA Today」、「Harvard University」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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